東京商工リサーチ(TSR)が4月上旬に実施した「BCP(事業継続計画)策定に関するアンケート調査」結果(有効回答数5165社)によると、台風や地震などの自然災害や感染症、テロなど、不測の事態に備えたBCPを「策定している」と回答した中小企業は24.5%で4社に1社にとどまったことが分かった。大企業の60.5%と大きな開きがあり、企業規模によるBCP格差は想定以上に大きい。
また、「策定の予定はない」は、大企業が9.4%にとどまる一方で、中小企業は30.6%に達した。不足の事態に見舞われた際、事業継続や早期回復ができるようにBCPを策定する。だが、緊急事態時のBCPを策定している企業は全体の29.5%にとどまる。さらに、BCPを策定している企業でも、自然災害や感染症への対策に比べ、電力不足やテロへの整備は遅れているようだ。
BCP策定企業のうち、約9割(88.8%)は自社が自然災害で被害を受ける場合を想定。東日本大震災や台風など自然災害への対策が背景にあるようだが、取引先の被災への対応は遅れている。また、「感染症」へのBCP策定は約6割(56.7%)に達するが、新型コロナ感染拡大で有効な運用できたか検証が必要だろう。一方、「電力不足」は16.5%、「戦争・紛争・テロ」は8.5%で、こうした事象は「想定外」としている企業が多いようだ。
このように、BCPを策定している企業のうち、自社が被災する自然災害への対応は約9割だった。だが、BCPの範囲は、自然災害やテロから感染症やサイバー攻撃、電力不足、サプライチェーンや物流の分断など多岐にわたる。あらゆる緊急事態に備えたBCPの策定は容易でないが、策定の有無は取引関係にも影響を及ぼしかねず、廃業や倒産につながる可能性もある。
BCP策定は話題性と実際の策定に乖離があり、まだ大きな広がりになっているとは言い難い。だが、策定していると経営基盤の強化と同時に、評価にもつながる。中小企業の多くは、長引くコロナ禍で経営体力が低下し、BCP策定にはコストや時間などの制約も大きい。だが、いつ起きるかわからない不測の事態に対するBCP策定は待ったなしで、これまでに以上の多方面の支援が必要になっている。
同調査結果は↓