値段も食べ方も味も千差万別のラーメン店。コロナ禍で営業時間が制限され、飲み会後のシメのラーメンは姿を消した。ところが、生活様式の変化により自宅で食べる麺類は伸びている。はからずもコロナ禍は、麺類が大好きな国民性を浮き上がらせた。東京商工リサーチの調査によると、2021年度のラーメン店の倒産(負債1000万円以上)は全国で22件(前年度比▲38.8%)にとどまり、過去10年で最少を記録した。
これはゼロ・ゼロ融資や雇用調整助成金、持続化協力金などのコロナ関連支援が大きかった。ただ、相次ぐ緊急事態宣言やまん延防止等重点措置の発出で、時短営業や酒類提供の自粛が残した痕跡は深い。さらに感染者数が落ち着いても、想定外の難しい局面が待ち受けている。感染者数が落ち着くとコロナ関連支援が縮小し、客足が戻らないラーメン店は「売上不振と支援縮小」の二重苦に追い込まれかねないからだ。
コロナ禍で外食は減ったが、自宅で麺類を食べる人は増えている。総務省の家計調査によると、2021年(総世帯)の麺類の1世帯当たりの支出額は1万5671円で、米の1万6962円と肩を並べる。これを裏付けるように、カップヌードルを手がける日清食品ホールディングス(株)の2022年(4~12月)は、国内即席麺が好調だった。とはいえラーメン店も黙ってはいない。
大手ラーメンチェーン店は、ひと足先に強気の業績を見込んでいる。“日高屋”を展開するハイデイ日高は、さらなる感染拡大がなく、徐々にコロナ前の状況に近づく想定で、2023年2月期は売上高375億円(前期比42.0%増)、営業利益18億円(前期35億円の赤字)と強気の業績を見込む。ハイデイ日高の担当者は、「遅い時間の動きはまだ鈍いが、感染者数が落ち着けば回復が期待できる」と強気の姿勢を崩さない。
コロナ感染拡大で夜遅くまで外食店で過ごす人は減った一方で、革新が続く即席麺やカップ麺に加え、ラーメン店からの持ち帰りやデリバリー対応も進んでいる。だが、競争相手はコロナだけではない。円安進行とロシアのウクライナ侵攻で、小麦など食材や原油、原材料が高騰し、隠れていた人手不足も顕在化。これから大型連休を迎え、夜遅い時間帯のお客争奪戦も激しさを増す。新型コロナで中断していた本当の生残り競争が、再び始まる。
同調査結果は↓https://www.tsr-net.co.jp/news/analysis/20220409_01.html