2021年は建設資材価格の高騰を受けて建築費が上昇

 2021年は建設資材価格の高騰を受けて建築費が大きく上昇したことが、みずほ信託銀行が発表した不動産マーケットレポートで分かった。特に普通鋼鋼材価格の上昇が著しく、建築費上昇の主因とみられている。(一財)建物物価調査会の「建築費指数」によると、東京のマンションとオフィスビルの建築費指数(2011年平均=100)は、2021年に入って横ばい基調から再び上昇に転じ、年半ば以降は上昇が加速している。

 建築費は主に労務費と建設資材価格の動向に影響を受けながら変動するとみられる。国土交通省の「建設労働需給調査結果」によると、建設技能労働者の不足感は2019年半ばをピークに緩和傾向にあり、労務費の上昇圧力は弱まっている。その一方、建設資材価格指数は2021年から上昇基調に入り、年半ば以降は上昇度合いが大きくなっており、建築費指数の推移と近似。建築費の上昇は建設資材価格の上昇が主因とみられる。

 建設資材別では、セメントや生コンクリートの価格が横ばいで推移しているのに対して、普通鋼鋼材は建築費の上昇が始まった時期と同じ2021年初から大幅に上昇。また、普通鋼鋼材ほどの度合いではないが、その他の鋼材価格も同じく2021年初から上昇傾向にある。鋼材価格上昇の背景には、中国の景気回復に伴って、鋼材の主原料である鉄鉱石や鉄スクラップの需要が増大し、価格が急騰したことが指摘されている。

 また、セメントは足元では価格が横ばいで推移しているが、大手製造各社は2022年からの値上げを公表。値上げの理由として、石炭価格高騰に伴う製造コストの増加のほか、輸送コストの増加や製造設備老朽化への対応、カーボンニュートラル実現に向けた中長期的な投資などが挙げられる。鋼材価格が更に上昇又は高止まりが続いた場合、セメント価格の上昇と相まって建設資材価格が更に上昇し、建築費の上昇圧力が強まる可能性がある。

 今後の建築費に関しては当面、建設資材価格の影響を強く受けると考えられる。国内建設需要は短期的には大きく変動しないことを踏まえると、建設資材価格は世界の建設需要動向による海外需給や原油価格の動向、輸入資材に影響する為替水準などの海外要因によるところが大きい。なお、為替に関しては、円安・ドル高が加速するとの予測があり、円安が進行した場合には建設資材価格の上昇圧力が強まる可能性があるとみられている。

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