旅館・ホテル経営業者、深刻さ増す企業の過剰債務

 帝国データバンクが発表した「旅館・ホテル経営業者の動向調査」結果によると、2021年の旅館・ホテル業の倒産件数は70件で、前年の118件から▲40.7%減少となった。対前年比でみると、2000年以来最大の下げ幅となった。金融機関によるコロナ融資や雇用調整助成金など各種支援策で持ちこたえている格好だ。一方、休廃業・解散の件数は174件と前年から43件(32.8%)増加、過去5年で最多となった。

 2020年度(2020年4月~2021年3月)までの旅館・ホテル業者の事業者収入高は約2.9 兆円となった。2018年度比では▲43.1%減と大幅に減収。新型コロナ感染拡大の影響でインバウンド需要は喪失し、国内においても緊急事態宣言などの外出自粛が大打撃となった。また、損益動向をみると営業段階で赤字となる企業が80%を超え、2020年度は最終で6028億円の赤字となり、雇用調整助成金などの支援効果も薄く、業界の苦境が鮮明になった。

 旅館・ホテル運営業者の業況(収入高)動向をみると、2021年12月時点では改善とする企業が26.8%と同年3月時点と比較して増加傾向にある。改善要因として、「Go To トラベル」ほか、ワクチン接種後の感染者数の減少による旅行需要の回復が寄与した。一方、減少企業は23.6%と構成比としては大幅に減少しているものの、横ばいが約半数にのぼり、業界全体として本格的な改善には至っていない。

 旅館・ホテル業者の財務内容において、月商に対し、有利子負債(借入金など)が何倍にあたるのかを示す有利子負債月商倍率は、コロナ前の2019年度は全体平均で12.45倍となっていたが、2020年度はコロナ融資など借入金増加により、同倍率は21.65倍と大きく増加。また、2021年12月時点では30.13倍と 30 倍を超えた。業態別内訳をみると、旅館は30.46倍とビジネスホテル、リゾートホテルなどと比べて過剰債務が顕著となった。

 もともと旅館・ホテル業は装置産業であり、他業種と比べて有利子負債月商倍率は高い傾向にあるが、規模別にみたとき年商1億円未満企業の有利子負債月商倍率が55.56倍と年商規模が小さい企業ほど過剰債務感を抱えている常に厳しい状況だ。2021年3月に民事再生法の適用を申請した(株)ビスタホテルマネジメントの倒産時の有利子負債月商倍率は、前年に比べて8倍に増加していたように急速な借入金増加が倒産に至るケースもある。

 同調査結果は↓

https://www.tdb.co.jp/report/watching/press/pdf/p220113.pdf