休廃業・解散、「あきらめ休廃業」の割合が過去最高に

 帝国データバンクがこのほど発表した「全国企業の休廃業・解散動向調査」結果によると、2021年に全国で休業・廃業、解散を行った企業(個人事業主を含む)は前年から約1400件(2.5%)減少の5万4709件を数えた。2021年初頭から3.76%の企業が、休廃業などの形で同年中に市場から退出・消滅。2020年に続き2年連続で減少し、コロナ前の2019年からは4000件超の大幅減少となったものの、減少率は大幅に縮小した。

 休廃業・解散件数は減少したものの、大幅に減少した倒産件数(法的整理)に比べると減少率は低いほか、対「倒産」倍率は過去最も高い9.1倍に達するなど、依然として高水準での推移が続いている。休廃業した企業の従業員への影響は、判明するうち少なくとも累計7万8411人に、消失した売上高は同様に合計2兆2325億円にのぼった。全ての雇用機会が消失したものではないが、休廃業・解散で約8万人が転退職や離職を迫られた。

 2021年は前年に続き、緊急事態宣言の発出などで国内の経済活動が冷え込み、小規模事業者を中心に「あきらめ型」の廃業が増える懸念があった。しかし、政府による中小企業へのいわゆる「ゼロゼロ融資」をはじめ資金調達環境が良好だったことが功を奏し、また、休業協力金をはじめ給付型マネーも潤沢に供給し、廃業へと傾きつつあった経営マインドに「待った」をかけたことが、休廃業・解散の発生を抑制した主な要因とみられる。

 ただ、休廃業・解散した企業のうち56.2%が当期純利益黒字で、全調査期間で2020年(57.1%)に次いで2番目に高い水準となった。資産が負債を上回る状態で休廃業・解散となった「あきらめ休廃業」の企業も全体の 62.0%と約6割を占め、過去最も高い。財務内容やキャッシュなどある程度の経営余力を残しているにもかかわらず、自主的に会社を休業・廃業、解散を行った「あきらめ休廃業」の割合がコロナ禍を境に高まっている。

 休廃業・解散を行った企業の代表者年齢は、2021年平均で70.3歳と、初めて70歳を超えた。休廃業・解散を行うピーク年代も高齢化が進み、年代別では「70代」が39.9%と約4割を占めるほか、ピーク年齢も2017年に初めて70歳台に到達して以降、高止まりが続く。対照的に、経営者のボリュームゾーンとなる「60代」、「50代」の割合は、いずれも前年から低下するなど、休廃業・解散企業における経営者の高齢化が顕著となっている。

 業種別にみると、前年から減少したのは、「建設業」など5業種。特に「小売業」は、件数・比率ともに全業種の中でも前年に比べ大きく減少した。前年に増加した「運輸・通信業」は、2021年は一転して減少。他方、旅館・ホテルや非営利団体(NPO)などを含む「サービス業」と「不動産業」の2業種は前年から増加した。発生率を表す休廃業・解散率では、最も高い業種は「小売業」の2.18%、最も低いのは、「運輸・通信業」の1.36%だった。

 同調査結果は↓

https://www.tdb.co.jp/report/watching/press/pdf/p220103.pdf