東京商工リサーチによると、2021年1年間の「後継者難」の倒産は、381件(前年比2.4%増)だった。2年連続で前年を上回り、調査を開始した2013年以降で最多件数を更新した。負債1000万円以上の2021年の倒産は6030件で、コロナ禍の資金繰り支援策の下支えにより57年ぶりの低水準となったが、「後継者難」倒産は全体の6.3%と、前年の4.7%より1.6ポイント上昇し、調査を開始した2013年以降で、最も高い水準になった。
金融機関は、財務情報を基準とした審査から、事業の将来性などを含めて判断する「事業性評価」に移行し、定着しつつある。企業の審査において、後継者の「有無」は重要な判断材料の一つだが、長引くコロナ禍で業績回復が遅れ、後継者の育成や事業承継への準備を先送りにしているケースもある。さらに、高齢の代表者ほど長期的な経営ビジョンを打ち出せず、事業継続へのリスクが高まっている。
要因別は、最多が代表者などの「死亡」の196件(前年比19.5%増)で、2年連続で前年を上回り、2014年の175件を超え、最多件数を記録。「後継者難」倒産に占める構成比は51.4%で、前年より7.4ポイント上昇。2018年(51.6%)以来、3年ぶりに構成比が50%台になった。また、「体調不良」は121件(同▲9.0%)で、2年ぶりに減少した。代表者などの「死亡」と「体調不良」は合計317件(同6.7%増)で、初めて300件を超えた。
産業別は、10産業のうち、増加が5産業、減少は5産業。最多は、「サービス業他」の84件(前年比10.5%増)で、2016年以降、6年連続で前年を上回った。次いで、「製造業」66件(同10.0%増)が2年連続、「不動産業」25件(同92.3%増)が2年ぶり、「情報通信業」11件(同22.2%増)が3年ぶりに、それぞれ増加した。「金融・保険業」は1件(前年ゼロ)で、2年ぶりに発生した。
資本金別では、「1千万円未満」が205件(前年比▲1.4%)、「後継者難」倒産に占める構成比は53.8%と、半数以上を占めた。また、負債額別は、「1億円未満」が271件(同▲0.7%)と、4年ぶりに前年を下回った。ただ、「5千万円以上1億円未満」が87件(同11.5%増)、「1億円以上5億円未満」が98件(同13.9%増)、「5億円以上10億円未満」が8件(前年7件)と増加し、中堅規模の企業でも、事業承継の問題は顕在化してきている。
同調査結果は↓