国税不服審が2021年4月~6月分の裁決事例を公表

 国税不服審判所はこのほど、2021年4月から6月分の裁決事例を同審判所ホームページ上にある「公表裁決事例要旨」及び「公表裁決事例」に追加し公表した。今回公表された裁決事例は、11事例(国税通則法関係4件、所得税法関係2件、相続税法関係3件、登録免許税法関係1件、国税徴収法関係1件)だった。今回は、10事例において全部取消し又は一部取消など、納税者の主張の何らかが認められており、実務家にとっても参考となると思われる。

 ここでは、贈与者である前住職から請求人への資金移動は、相続税法第66条第4項に規定する財産の贈与に該当すると認められるものの、前住職及びその親族が、請求人の業務運営、財産運用及び解散した場合の財産の帰属等を事実上私的に支配している事実は認められないことから、贈与者である前住職の親族等の相続税の負担が不当に減少する結果となるとは認められないとした事例を紹介する。

 原処分庁は、請求人が相続税法施行令第33条《人格のない社団又は財団等に課される贈与税等の額の計算の方法等》第3項第1号ないし第3号の各要件をいずれも満たしていないことに加え、(1)前住職から請求人への資金移動の時点における請求人の役員の3分の2を前住職及びその親族で占めており、請求人の業務を自由に裁量できる立場であったこと、(2)請求人は前住職らに対し、生活費の供与など特別の利益を与えていること。

 さらに、(3)請求人が解散した場合、前住職らに財産が帰属することなどを理由として、前住職から請求人への資金移動により相続税法第66条第4項に規定する贈与者である前住職の親族等の相続税の負担が不当に減少する結果となる旨主張した。しかしながら、請求人は上記施行令の規定には該当しないものの、(1)前住職らによる請求人の業務運営及び財産管理については、請求人の総代が相当程度に監督しているものと認められる。

 (2)前住職らが、本件資金移動の時点において、請求人の財産から私的に生活費などの財産上の利益を享受した事実は見当たらないこと、及び(3)前住職らが恣意的に請求人を解散し、その財産を私的に支配することができるとはいえないことから、本件資金移動により相続税法第66条第4項に規定する前住職の親族等の相続税の負担が不当に減少する結果となるとは認められないとして、原処分庁の処分を全部取り消している。

 2021年4月から6月分の裁決事例は↓https://www.kfs.go.jp/service/JP/idx/123.html