貸倒引当金、積増しはリーマンショック超えの77行

 東京商工リサーチがこのほど発表した調査結果によると、コロナ禍の資金繰り支援などで、企業倒産は歴史的な低水準が続くが、国内106銀行の2021年9月中間期(単独)の「リスク管理債権」は7兆7438億円(前年同期比8.1%増)と、9月中間期では3年連続で増加したことが分かった。貸出金に占める「リスク管理債権」の構成比は1.35%(前年同期1.25%)で、2018年同期(1.16%)を底に、3年連続で前年同期を上回った。

 「リスク管理債権」の内訳は、「破綻先債権」2695億円(前年同期比▲17.7%)、「3ヵ月以上延滞債権」505億円(同▲41.2%)が減少する一方、「延滞債権」5兆4274億円(同7.4%増)、「貸出条件緩和債権」1兆9961億円(同17.6%増)が増加した。コロナ禍の資金繰り支援で、銀行は貸出金を伸ばした。ただ、リスク管理債権の増加は、返済猶予の裏側で支援効果が薄れ、先行きの資金繰りを懸念する銀行の姿勢が透けて見える。

 また、倒産や債務整理などで債権回収不能に備えた「貸倒引当金」は3兆5287億円(前年同期比10.8%増)と積増しが目立つ。9月中間期では3年連続で増加し、増加率(10.8%増)は前年同期(20.4%増)より9.6ポイント縮小するが、10%超と高い水準で推移。前年同期より貸倒引当金を積み増した銀行は77行(構成比72.6%、前年同期80行)で、リーマンショックの2009年3月期(67行)を大きく上回った。

 10月に緊急事態宣言などが全面解除され、経済活動が本格的に動き出したが、長引くコロナ禍で企業は疲弊感を強めている。国内106銀行のうち、リスク管理債権が前年同期を上回ったのは大手行4行、地方銀行48行、第二地銀28行の計80行(前年同期85行)で、7割超(構成比75.4%)の銀行で増加。また、貸倒引当金の積増しは、大手行6行、地方銀行44行、第二地銀27行の合計77行(前年同期80行)だった。

 2021年9月中間期の「貸出金」合計は、571兆522億円(前年同期比0.1%増)。9月中間期では、2011年同期から11年連続で増加し、調査開始の2008年同期以降では最高を更新した。業態別は、大手行の285兆1317億円(前年同期比▲1.8%円)が唯一、減少。一方、地元企業を取引先としている地方銀行234兆2081億円(同1.9%増)、第二地銀51兆7122億円(同2.9%増)と、貸出金を伸ばした。

 貸出金残高が増加したのは、大手行が4行、地方銀行が49行、第二地銀が30行の合計83行。「貸出金利息」合計は2兆7769億円(前年同期比▲7.2%)で、9月中間期では2年連続で減少。業態別では、大手行が1兆3911億円(同▲12.7%)、地方銀行が1兆1067億円(同▲1.0%)、第二地銀が2790億円(同▲0.07%)と、全業態で減少した。ただ、第二地銀は他の業態に比べ貸出金の伸びが大きく、貸出金利息は僅かな減少にとどまった。

 同調査結果は↓

https://www.tsr-net.co.jp/news/analysis/20211216_01.html