後継者難倒産、累計350件で年間最多を更新の見込み

 東京商工リサーチが発表した2021年1~11月の「後継者難」の倒産は、350件(前年同期比2.9%増)に達した。今のペースをたどると、年間最多だった2020年の372件を超える可能性も出てきた。負債1000万円以上の倒産(2021年1~11月、5526件)は、コロナ禍の資金繰り支援策の下支えにより歴史的な低水準で推移している。ただ、「後継者難」倒産は全体の6.3%(前年同期4.7%)で、前年同期より1.6ポイント上昇した。

 金融機関の審査は、財務情報だけでなく、事業の将来性などを含めて判断する「事業性評価」が定着している。そこでは後継者の「有無」が、大きなポイントになっている。だが、長引くコロナ禍で業績回復が遅れ、後継者の育成や事業承継への準備は先送りにしている企業は少なくない。また、高齢の代表者ほど長期的な経営ビジョンを打ち出せず、収益力、採算性などが落ち込み、事業へのリスクが高まっている。

 「後継者難」倒産の要因別では、代表者などの「死亡」が182件(前年同期比22.1%増)で最多。1~11月では2014年同期(159件)を超え、最多件数を更新。構成比は52.0%で、前年同期より8.2ポイント上昇した。2018年同期(51.1%)以来、3年ぶりに構成比が50%台に。また、「体調不良」は109件(同▲9.1%)で、2年ぶりに減少した。代表者などの「死亡」と「体調不良」は合計291件(前年同期比8.1%増)に達し、最多を記録した。

 産業別では、10産業のうち、増加が4産業、減少は4産業。最多は、「サービス業他」の77件(前年同期比13.2%増)で、1~11月では2016年以降、6年連続で前年同期を上回った。サービス業他では、広告業(ゼロ→5件)、建築設計業(1→5件)を含む学術研究,専門・技術サービス業が16件(前年同期7件)、美容業(2→4件)、旅行業(ゼロ→2件)を含む生活関連サービス業,娯楽業が10件(同5件)などで増加した。

 そのほか、「製造業」61件(前年同期比12.9%増)が2年連続、「不動産業」24件(同100.0%増)が2年ぶりに、前年同期を上回った。増加率が最も大きい不動産業は、不動産代理業・仲介業(4→8件)、貸事務所業(2→6件)などで増加が目立つ。一方、「建設業」68件(同▲12.8%)、「卸売業」59件(同▲1.6%)が2年ぶり、「農・林・漁・鉱業」2件(同▲66.6%)、「小売業」36件(同▲10.0%)が3年ぶりに、それぞれ減少した。

 資本金別では、「1千万円未満(個人企業他を含む)」が184件(前年同期比▲1.6%)。「後継者難」倒産に占める構成比は52.5%(前年同期55.0%)と、引き続き半数以上を占めた。一方、「1億円以上」は前年同期と同件数の1件だった。負債額別は、「1億円未満」が246件(前年同期比▲2.3%)。「後継者難」倒産に占める構成比は70.2%(前年同期74.1%)で、小規模倒産を主体とした推移が続いている。

 同調査結果は↓

https://www.tsr-net.co.jp/news/analysis/20211208_03.html