企業の本格的なDXへの取組みは約1割にとどまる

 デジタル技術の進展や消費者ニーズの多様化によってビジネス環境が激しく変化するなか、企業が生き残るためにはその変化に合わせて、データとデジタル技術を活用した製品やサービス、ビジネスモデルの変革によって競争上の優位性を確立させる「DX(デジタルトランスフォーメーション)」の実現が求められている。そこで、帝国データバンクは、「DXに関する企業の動向調査」を実施した。

 調査結果(有効回答数1614社)によると、DX及びデジタル化など「DX推進に向けた取組みを実施している」企業は81.8%、「取り組んでいない」企業は17.0%となった。取り組んでいる企業における、その具体的な内容(複数回答)は、「オンライン会議設備の導入」(61.9%)や「ペーパーレス化」(60.6%)などDX実現の初期段階の取組みである業務環境のオンライン化などが上位を占めた。

 一方で、デジタル技術を活用して「既存製品・サービスの高付加価値化」(11.7%)及び「新規製品・サービスの創出」(10.8%)といったDXへの本格的な取組みを進めている企業は1割にとどまっている。企業からは「国立大学と共同してAIを活用した製品を開発した」(サービス、岡山県)といった声が聞かれる一方、「小規模企業として、DXに取り組むには費用がかかる」(製造、長野県)といった費用面に対する懸念もみられた。

 新規模別にみると、「大企業」は、「オンライン会議設備の導入」が83.3%と8割超にのぼった(中小企業は57.7%)ほか、「ペーパーレス化」(69.8%)や「テレワークなどリモート設備の導入」(57.7%)なども半数以上の企業で推進している。他方、「中小企業」においても、58.8%と6割近くの企業で「ペーパーレス化」などを進めているが、ほとんどの項目で「大企業」を下回っている。

 同調査の結果、企業の本格的なDXへの取組みは進んでいないことが判明した。新型コロナウイルスの感染拡大を機に業務環境のオンライン化の急速な進展によってDX推進の初期段階はクリアできているものの、ビジネスモデルや組織マインドの変革のような本格的な取組みに着手できている企業は多くない。本格的なDX実現に向けて、企業は社会のニーズを見極め、デジタル技術を活用してビジネスの変革を行うことが求められる。

 同調査結果は↓

https://www.tdb.co.jp/report/watching/press/pdf/p211203.pdf