海外取引法人調査で1530億円の申告漏れ所得を把握

 企業等の事業、投資活動のグローバル化が進展するなか、海外取引を行っている法人の中には、海外の取引先への手数料を水増し計上するなどの不正計算を行うものが見受けられる。国税庁は、このような海外取引法人等に対し、国外送金等調書や租税条約等に基づく情報交換制度を積極的に活用するなど、深度ある調査に取り組んでいる。2020事務年度は、海外取引法人等に係る実地調査を4569件(前年度比▲65.2%)実施した。

 前年度と比べて調査件数等が大幅に減少しているのは、新型コロナウイルス感染症の影響のため。この結果、海外取引等に係る非違があったものが1424件(前年度比▲60.8%)把握された。非違があった件数は前事務年度に比べて減少し、海外取引等に係る申告漏れ所得金額も▲36.5%と大幅減少の1530億円となった。非違があったうちの185件(同▲62.8%)は不正計算があったもので不正所得金額は93億円(同▲49.2%)だった。

 一方、国税庁では、海外取引に係る脱税や租税回避を防ぐために各国の税務当局と金融口座情報を交換する新制度(CRS)を積極的に活用している。2020事務年度においても、外国税務当局から受領した金融口座情報を端緒に取引の全貌を解明し、海外の代表者名義口座を利用して売上を除外していた事案が明らかになっている。調査対象は、製造業を営むA法人だった。

 代表者が海外で保有する預金口座情報をX国からのCRS情報により入手し、その口座に多額の残高があることが把握された。A法人の申告上は、国内売上のみとされているにもかかわらず、調査で確認したところ、海外関連費用の計上が認められた。この事実に基づき代表者を追及したところ、海外グループ法人に対する役務提供の対価を海外の個人口座で回収することにより、売上を除外していた事実が判明した。

 代表者は「売上先は海外の法人だし、お金も海外の口座に預金しておけば、税務署には分からないだろう」と高をくくって売上除外していたとみられる。A社に対しては、5年分の法人税の申告漏れ所得金額1億2000万円について重加算税を含む追徴税額3300万円が課されている。なお、CRS情報については、2019事務年度において、日本の居住者に係る金融口座情報約205万件を86ヵ国・地域から受領している。