東京商工リサーチがこのほど発表した「2021年1~11月の飲食業倒産動向調査」結果によると、同期間の「飲食業」倒産は累計596件(前年同期比▲24.7%)で、11ヵ月累計では3年ぶりに前年同期を下回った。11ヵ月累計で500件台は、2016年同期(586件)以来、5年ぶり。通年でも2016年(639件)以来の600件台にとどまる見通し。11月の飲食業倒産は39件(前年同月比▲37.0%)と、今年に入り2月(37件)に次ぐ少なさとなった。
飲食業は2019年9月以降、消費増税や人手不足による人件費上昇が負担となって倒産が急増。さらに、2020年以降は新型コロナ感染拡大に伴う緊急事態宣言、まん延防止等重点措置が相次いで発令され、休業や時短営業などの要請で2020年の倒産は過去最多の842件に達した。2021年はコロナ関連支援策の効果で、倒産は抑制されている。ただ、コロナ関連倒産は11ヵ月累計275件に達し、約半数(46.1%)がコロナ禍の影響を受けている。
業種別にみると、最多が日本料理店や中華料理店、ラーメン店、焼肉店などの「専門料理店」の159件(前年同期比▲17.1%)、次いで、「酒場,ビヤホール(居酒屋)」137件(同▲15.4%)、「食堂,レストラン」111件(同▲39.6%)の順。居酒屋は、過去30年間では2020年同期(162件)に次ぐ2番目の多さだった。通年でも、2012年(141件)を超え、過去2番目となることがほぼ確実となった。
倒産に占めるコロナ関連倒産の構成比は、居酒屋が58.3%(80件)と約6割を占め、業種別では最高だった。一方、コロナ禍で浸透した「持ち帰り飲食サービス業」は15件(前年同期比▲40.0%)にとどまり、通年では2016年(18件)以来、5年ぶりに10件台の可能性が出てきた。また、原因別の最多は、「販売不振」の509件(同▲24.4%)。以下、「既往のシワ寄せ」が31件(同▲8.8%)、「事業上の失敗」が22件(同▲26.6%)の順。
負債額別では、「5億円以上10億円未満」が11件(前年同期比22.2%増)で、唯一、前年同期を上回った。コロナ関連支援策が全体の倒産件数を抑制した一方で、中堅規模の飲食業には支援効果が浸透せず、倒産件数を押し上げた可能性がある。ただ、「1千万円以上5千万円未満」は446件(構成比74.8%)と、小規模倒産を中心とした推移に変化はない。一方、「10億円以上」は4件(前年同期比▲33.3%)発生した。
同調査結果は↓