国税当局は、インターネット上のプラットフォームを介してシェアリングエコノミー(シェアエコ)等新分野の経済活動に係る取引を行っている個人に対しては、有効な資料情報の収集・分析に努め、適正な課税に努めている。シェアエコ等新分野の経済活動とは、シェアリングビジネス・サービス、暗号資産(仮想通貨)取引、ネット広告、デジタルコンテンツ、ネット通販、ネットオークション等を総称した経済活動のことをいう。
国税庁によると、今年6月までの1年間(2020事務年度)において、シェアエコ等新分野の経済活動を行っている個人を対象に1071件(前事務年度1877件)を実地調査(特別・一般)した結果、1件当たり平均1872万円(同1264万円)の申告漏れ所得金額を把握。この申告漏れ額は、同時期の実地調査(同)全体での1件平均1480万円を上回る。申告漏れ所得金額の総額201億円(同237億円)に対し53億円(同65億円)を追徴した。
調査件数を取引区分別にみると、「ネットトレード(暗号資産など)」が40.3%を占めて最も多く、1件当たりの申告漏れ所得額も2456万円と最も高額だった。次いで、「ネット通販・ネットオークション」19.4%、同1166万円、「シェアリングビジネス(民泊、カーシェアリング、クラウドソーシングなど)」17.8%、同1208万円、「ネット広告」5.4%、同2253万円、「デジタルコンテンツ」2.8%、同1572万円などとなっている。
調査事例では、支払調書が発行されないスキルマーケットサイトでの売上を申告しなかった事例が報告されている。楽曲制作・販売を行っていたAは、部内資料からスキルマーケットサイトからの入金を把握したが、申告額に照らすと申告漏れが想定され、調査対象となった。自宅内の現況・現物確認調査の実施から、音楽講師やカラオケ使用料等の印税収入のほか、スキルマーケットサイトを通じた楽曲販売で収入を得ていた事実が判明した。
しかし、Aは、スキルマーケットサイトからの収入は申告していない事実を把握。Aに説明を求めたところ、「スキルマーケットサイトからの収入は支払調書が発行されず、ネット取引は匿名性が高いことから、税務当局には把握されまい」と考えて、納税を免れるために、故意に売上除外していた事実を認めた。Aに対しては、所得税3年分の申告漏れ所得金額約2100万円について追徴税額(重加算税含む)約400万円が課されている。