中小企業での後継者問題が深刻さを増しているが、東京商工リサーチが発表した「2021年後継者不在率調査」結果によると、同年の「後継者不在率」は58.6%で前年より1.0ポイント上昇した。2020年から猛威を振るう新型コロナウイルスは、10月に入り急速に新規感染数が落ち着いた。コロナ関連支援で後継者問題は先送りされた格好だが、変化への対応に後れを取った企業は今後、事業継続の厳しい判断を迫られる可能性も高まっている。
「後継者不在」を産業別でみると、不在率の最高は、「情報通信業」の76.8%。ソフトウェア開発などIT関連業種が含まれ、業歴が浅く代表者の年齢も比較的若いことが背景にある。また、「サービス業他」は63.7%、「小売業」は61.1%で、この3産業は不在率が6割を超えた。一方、最低は「農・林・漁・鉱業」の50.0%。以下、「製造業」の52.1%、「運輸業」54.6%、「金融・保険業」54.8%の順だった。
後継者「有り」の企業では、息子、娘などの「同族継承」の予定が66.7%、次いで、従業員へ承継する「内部昇進」が16.8%、社外の人材に承継する「外部招聘」が15.8%と、いずれも20%に届かなかった。また、後継者不在の企業の中長期的な承継希望先は、最多が「未定・検討中」の50.5%。次いで「設立・交代して浅い、または若年者にて未定」の42.6%だった。一方、「廃業・解散・整理(予定含む)にて不要」は0.6%だった。
代表者の年齢別では、不在率の最高は「30歳未満」の95.8%。創業や事業承継から日が浅く、後継者を選定する必要がなく不在率が高い。50代までは後継者「不在」が「有り」を上回るが、60代以降で逆転。80歳以上の不在率は22.6%にのぼる。一般に数年かかるとされる事業承継の準備期間を加味すると、対応を迫られている企業は多い。事業承継の遅れる要因の一つに、代表が高齢の企業ほど業績が低迷し、成長性も乏しいことが背景にある。
業種別(母数20以上)でみると、不在率の最高(ワースト)は「インターネット附随サービス業」の91.5%で、唯一9割を超えた。上位10業種をみると、インターネット通販を含む無店舗小売業や通信業、情報サービス業などが並ぶ。代表者の年齢が比較的若いことが影響している。不在率が低いのは、「宗教」の25.0%を筆頭に、「協同組織金融業」28.9%、「協同組合」31.7%、「銀行業」34.9%、「鉄道業」36.4%と続く。
同調査結果は↓