所得拡大促進税制が2021年度税制改正において見直された。所得拡大促進税制は、青色申告書を提出している中小企業者等が、一定の要件を満たした上で、前年度より給与等の支給額を増加させた場合、その増加額の一部を法人税(個人事業主は所得税)から税額控除できる制度。中小企業は所得拡大促進税制のままだが、大企業は人材確保等促進税制という名称に変わって、税額控除額の計算方法も中小企業とは違う計算方法になっている。
中小企業の所得拡大促進税制は、要件の判定が簡素化されている。一定の役員や役員等と特殊な関係にある従業員の給与を対象外とすることは変わっていないが、基本的にはこの制度で国内雇用者とされる従業員に、適用年度において支給する給与、これを「雇用者給与等支給額」というが、これが前年度の給与である「比較雇用者給与等支給額」の、101.5%以上であれば税額控除の対象となる。
税額控除額は、原則として雇用者給与等支給額と比較雇用者給与等支給額との差額に15%を乗じて計算した金額となる。そこで注意点が一つある。税額控除額の基礎となる雇用者給与等支給額と比較雇用者給与等支給額との差額を「控除対象雇用者給与等支給増加額」というが、雇用調整助成金等の雇用安定助成金を受給している場合は、これを控除した場合の控除対象雇用者給与等支給増加額を上限としなければならない点だ。
例えば、適用年度に給与を1000万円支給した一方で雇用調整助成金を300万円もらい、前年度は給与を600万円支給し、雇用調整助成金は受給していなかったケース。単純に税額控除額を計算すると1000万円と600万円との差額の400万円に15%を乗じて60万円となる。しかし、雇用調整助成金等をもらっている場合は、これを給与から控除した上での差額を計算し、それを控除対象雇用者給与等支給増加額の上限としなければならない。
したがって、このケースでいうと、適用年度の給与1000万円から300万円を控除した700万円と、前年度給与の600万円との差額の100万円が上限となってしまう。つまり、税額控除額は100万円の15%である15万円になってしまうわけだ。そのほかでは、今回の改正以降も、一定要件を満たせば控除率15%を25%に上乗せができる。雇用者給与等支給額が比較雇用者給与等支給額の102.5%以上であることが必須条件となる。
あとは、教育訓練費が前年度の教育訓練費の110%以上であるか、中小企業等経営強化法の認定を受けて、経営力向上が行われたことについて一定の証明がされているか、のどちらかを満たすことによって、15%を乗じて税額控除額を計算するところを25%にすることができる。ただし、税額控除額は法人税額の20%が上限とされているので、上乗せできる状況であっても全額税額控除できないこともあるので注意したい。