減資企業、21年度上半期は前年度を大幅増のペース

 資本金を減資(減少)する企業が相次いでいる。東京商工リサーチが発表した「2021年度上半期の減資企業動向調査」結果によると、資本金1億円超から1億円以下に減資し、税制上の大企業から中小企業に扱いが変わる企業は、2020年度に997社(前期比39.4%増)と急増した。2021年度も上半期(4~9月)だけで684社が判明。前期1年間の約7割に達した。このペースで推移すると年間1400社に到達する可能性も出てきた。

 2021年度は10月以降も旅行大手の日本旅行やレストランのジョイフルなど1億円への減資を計画しており、前年度を大幅に上回ることが確実になっている。すでにJTBやスカイマーク、グリーなどの大企業も資本金を1億円以下に減資し、減資へのハードルは下がっている。大企業を維持するメリットが薄まり、コロナ禍で傷んだ財務内容の改善や節税など、身の丈にあった経営を求める姿勢が背景にある。

 これまで資本金は、事業規模や信用力などを測る目安だった。だが、コロナ禍で業績不振に陥る企業が続出し、赤字累積の解消や中小企業化による優遇措置を求めて減資する企業が目立つ。必ずしも資本金が企業の実力を示す「モノサシ」ではなくなったことを示している。税効果などを狙う減資か、財務改善のための減資か、区別はつきにくい。資本金の増減資で税負担の軽重が変わる現行制度の問題点を指摘する声もある。

 2021年度上半期の増資企業を産業別にみると、「サービス業他」が1806社(構成比26.6%)で最多。次いで「建設業」が1442社(構成比21.2%)。一方、減資企業の産業別は、最多は「サービス業他」の553社(同30.32%)だった。2020年度(同30.38%)とほぼ横ばいで、長引くコロナ禍で減資が高水準を持続している。構成比が上昇したのは、「製造業」302社(前期比1.9ポイント増)、「運輸業」83社(同1.1ポイント増)だった。

 資本金1億円超から1億円以下に減資した企業は、年間では大幅に増加する勢いをみせている。最多は、「サービス業他」の203社(構成比29.6%)。半年間で2020年度272社の7割超(74.6%)に匹敵する増加ペースをたどる。このほか、増加が目立ったのは「運輸業」の23社(構成比3.3%、前期比0.8ポイント増)と「情報通信業」の130社(同19.0%、同0.8ポイント増)などだった。

 同調査結果は↓

https://www.tsr-net.co.jp/news/analysis/20211112_01.html