今年度上半期の旅行業の倒産、コロナの影響で急増

 東京商工リサーチの調査によると、2021年度上半期(4~9月)の旅行業倒産(負債1000万円以上)は16件(前年同期比166.6%増)と、前年同期比2.6倍増に急増した。前年同期を上回ったのは4年ぶり。このうち、新型コロナ関連倒産は15件(構成比93.7%)で、コロナ禍の長期化が旅行業に深刻な打撃を与えている。新型コロナ感染拡大は、入出国規制や緊急事態宣言の発令で国内外の人流を抑制し、旅行業界に大打撃を与えている。

 政府は実質無利子・無担保融資やコロナ特例リスケのほか、持続化給付金や雇用調整助成金の特例措置など支援策を打ち出した。加えて、2020年7月には「GoToトラベル」キャンペーンを開始したが、相次ぐ新型コロナ感染拡大で、同キャンペーンは同年12月に停止したまま。国内でも人流抑制が長引き、旅行だけでなくビジネス関係でもリモートワークの浸透で出張が大幅に減少している。

 東京商工リサーチ(TSR)が8月に実施したアンケートでは、旅行業の約4割(構成比38.2%)が「コロナ禍の収束が長引いた場合、“廃業”を検討する可能性がある」と回答している。国土交通大臣は、5日の就任会見で「GoToトラベル」再開を示唆したが、業界からは入出国制限の早期緩和を求める声も根強い。コロナ収束の時期にもよるが、それまでは旅行業の息切れ倒産、廃業の増加が危惧される。

 上半期倒産の原因別の最多は、「販売不振」の14件(前年同期比366.6%増)で、旅行業倒産の約9割を占めた。コロナ禍の業況悪化を原因とした旅行業者が大部分を占める。このほか、「他社倒産の余波」、「事業上の失敗」が各1件。『不況型倒産』(既往のシワ寄せ+販売不振+売掛金等回収難)も14件を占めた。また、コロナ禍では国内旅行よりも海外旅行の方が壊滅的な状況で、海外旅行に特化した業者の倒産が散発している。

 負債額別の最多は、「5千万円以上1億円未満」の6件で、全体の約4割(構成比37.5%)を占めた。次いで、「1千万円以上5千万円未満」が5件で続き、負債1億円未満の小規模倒産が全体の約7割(同68.7%)を占めた。小規模業者は経営体力に乏しく、コロナ禍の長期化に耐えられなくなった倒産が増えている。また、従業員数別では、「5人未満」が12件(前年同期比300.0%増)で最多。旅行業倒産の約8割(同75.0%)を占めた。

 同調査結果は↓

https://www.tsr-net.co.jp/news/analysis/20211006_03.html