新型コロナ感染拡大の余波が、調剤薬局にも広がっている。東京商工リサーチの調査結果によると、業界乱立とコロナ禍で病院の受診控えが進み、2021年1~8月の「調剤薬局」の倒産は22件(前年同期比83.3%増)に達し、2004年の調査開始以来、年間最多だった2017年(17件)を大幅に上回った。22件のうち、コロナ関連倒産は4件(構成比18.1%)で、今後さらにコロナ関連倒産が増加しそうだ。
厚生労働省によると、2020年度の調剤医療費は7兆4987億円(前年度比▲2.6%)に減少。処方箋の枚数が前年度比▲9.2%と落ち込み、調剤料など業績の柱の技術料も同▲5.0%減少した。コロナ禍で病院の受診控えが続き、マスクや手洗いなどで疾患が減ったことも響いた。大手チェーンの調剤薬局や、調剤併設のドラッグストアの出店も加速し、コンビニより多い約6万店もの薬局が全国でひしめき、競争は激しさを増している。
対照的に、調剤薬局を除く医薬品小売業の倒産は同期間で6件(前年同期7件)、医薬品だけでなく日用品も扱うドラッグストアは同ゼロ(同4件)と、それぞれ前年同期を下回った。マスクや消毒液などが伸び、コロナ禍で明暗を分けた格好となった。調剤薬局を取り巻く環境は、薬価改定や後発薬の浸透などで厳しい。奇しくもコロナ禍で健康が脚光を浴び、疾患の減少が恒常化すれば、さらに調剤薬局の淘汰が加速する可能性もある。
負債総額も25億9100万円(前年同期比306.7%増)で、前年同期から4倍超と大幅に増加した。10億円以上の倒産が1件(前年同期ゼロ)、1億円以上5億円未満が4件(前年同期比100.0%増)と出店投資が膨らむ中堅の倒産増が負債を押し上げた。原因別では、販売不振が16件(同220.0%増)と全体の7割超を占めた。大手チェーンやドラッグストアとの競合の深刻さをうかがわせる。
調剤薬局は一定の薬剤の在庫が必要で、処方箋の枚数が減少すると在庫回転が一気に鈍り、資金繰り悪化に直結しやすい。また、2年に1度だった薬価改定が、2021年度から毎年改定となり、差益の圧縮だけでなく大手との仕入力の格差も広がっている。人口減と高齢化という要因を背景に、コロナ収束後に処方箋の枚数がコロナ前の水準に戻るかせめぎ合いが続く。当面、厳しい環境のまま、倒産はさらに増勢をたどるとみられる。
同調査結果は↓