飲食業の倒産、「緊急事態・まん延防止」地域外で増加

 東京商工リサーチがこのほど発表した「飲食業の倒産調査」結果によると、2021年1~8月の飲食業倒産(負債1000万円以上)は447件(前年同期比▲23.3%減)で、コロナ関連支援で落ち着いている。ただ、飲食業倒産のうち、コロナ関連倒産は204件(構成比45.6%)を占め、コロナ禍の収束が見通せないなか、支援効果も限界に近づきつつあるようだ。都道府県別では、増加が19府県、減少が24都道府県、同数が4県となった。

 増加した19都道府県のうち、青森(2→4件)、岩手(1→3件)、山形(1→2件)、長野(3→5件)、福井(2→3件)、和歌山(7→8件)、鳥取(0→2件)、島根(2→4件)、山口(7→14件)、大分(2→3件)の10県は緊急事態宣言・まん延防止等重点措置の対象地域外だ。全国的に感染拡大が続くなか、宣言地域外では協力金などの支援が乏しく、コロナ禍での来店客数の減少や客単価の低下などの影響が大きくなっているようだ。

 業種別にみると、「酒場、ビヤホール(居酒屋)」は100件のうち、コロナ関連倒産が62件を占めた。また、「バー、キャバレー、ナイトクラブ」は42件、前年同期比5.0%増と唯一、増加。酒類提供が経営の柱の業種では、営業時間の短縮に加え、酒類提供の制限が深刻な打撃を及ぼしていることが分かる。ワクチン接種を前提とした制限緩和に向けた議論も始まっているが、コロナ禍前の売上水準に回復するのは難しい状況となっている。

 また、新型コロナウイルスの感染者の急増で、8月に「緊急事態宣言」と「まん延防止等重点措置」の適用地域が拡大した。飲食業者は休業や時短営業、酒類提供の停止など、営業に大きな制限を余儀なくされている。その一方、全国的な感染拡大で対象地域外でも、人流抑制の動きが広がり、客足の冷え込みから飲食業界の倒産は増えている。長引くコロナ禍のなかで、対象地域外でも飲食業界への支援のあり方が問われている。

 2021年1~8月の飲食業倒産は、447件(前年同期比▲23.3%)。過去最多を記録した2020年同期は、コロナ禍前の人手不足による人件費上昇に加え、最初の緊急事態宣言で全国的に外出自粛が急激に広がり、飲食業倒産が増加した。2021年は新型コロナ関連の各種支援の効果もあり、倒産は全体的に小康状態が続いている。ただ、1~8月は、新型コロナ関連倒産が204件と、飲食業倒産の半数近くを占め、コロナ禍の影響の深刻さがうかがわれる。

 新型コロナ関連倒産の構成比が高い業種は、「酒場、ビヤホール(居酒屋)」が62.0%(新型コロナ関連倒産62件)で最高だった。以下、「専門料理店」が49.5%(同60件)、「食堂、レストラン」が43.2%(同35件)と続く。「緊急事態宣言」、「まん延防止等重点措置」の適用地域で酒類の提供制限や時短営業が継続するなか、酒類を取り扱う業種でコロナ関連倒産の割合が高くなっている。

 同調査結果は↓

https://www.tsr-net.co.jp/news/analysis/20210906_01.html