2020年度の滞納整理の訴訟提起は102件~国税庁

 国税庁が先日公表した2020年度租税滞納状況によると、コロナ禍の影響を受けて滞納発生が増加したことなどから、国税の滞納残高が22年ぶりに増加したことが明らかになった。同庁では、処理の進展が図られない滞納案件については、差押債権取立訴訟や詐害行為取消訴訟といった国が原告となる訴訟を提起したり、滞納処分免脱罪による告発を活用して、積極的に滞納整理に取り組んでいる。

 原告訴訟に関しては、2020年度は102件の訴訟を提起。訴訟の内訳は、「供託金取立等」8件、「差押債権取立」3件、「その他(債権届出など)」90件のほか、特に悪質な事案で用いられる「名義変更・詐害行為」が1件。また、財産の隠ぺいなどにより滞納処分の執行を免れようとする悪質な滞納者に対しては、「滞納処分免脱罪」の告発を行うなど、特に厳正に対処。2020年度は、8件(13人(社))を告発している。

 悪質な滞納事例をみると、滞納処分の執行を免れるため、従業員に開設させた預金口座にクレジットカード決済金を振込入金させるなどして財産を隠ぺいした行為について、滞納処分免脱税で告発した事例がある。クラブ等を経営する滞納会社の代表者は、同社の従業員に預金口座2口座を開設させ、滞納会社が経営するクラブを取扱店舗とする加盟店契約を従業員名義で契約させた。

 その上で、クレジットカード会社から228回にわたり、クレジットカード決済金合計約3億5000万円を同口座に振込入金させた。徴収職員は、こうした行為が滞納処分の執行を免れる目的でされた財産の隠ぺいに該当すると判断し、滞納会社の代表者を滞納処分免脱税で告発した。そのほか、取引先から振り込まれた業務委託料の一部を現金で引き出し、親族名義の預金口座に入金するなどして財産を隠ぺいした会社を告発した事例などがある。

 なお、上記の「詐害行為取消訴訟」は、国が、滞納者と第三者との間における債権者(国)を害する法律行為の効力を否定して、滞納者から離脱した財産をその第三者から取り戻して滞納者に復帰させるために行うもの。また、「名義変更訴訟」は、国税債権者である国が、国税債務者である滞納者に代わって、滞納者に帰属しながら滞納者の名義となっていない財産の名義を滞納者名義とすることを求めて提起するものだ。