中小企業の「過剰債務率」が過去最悪の35.7%に

 東京商工リサーチがこのほど発表した「債務の過剰感についてアンケート調査」結果(有効回答数9105社)によると、債務の過剰感の状況は、「コロナ前から過剰感がある」が13.2%、「コロナ後に過剰となった」が19.6%で、32.9%の企業が「過剰債務」であると回答した。「過剰債務」と回答した企業割合は、前回調査(2021年6月)の31.6%から1.3ポイント上昇し、2021年4月に調査を開始して以降で最悪となった。

 規模別でみると、「過剰債務」と回答した大企業は16.7%だった。中小企業(資本金1億円未満、個人企業等)に限ると、「過剰債務」と回答した企業は35.7%にのぼり、前回調査(34.2%)から1.5ポイント悪化した。国や自治体、金融機関の資金繰り支援で倒産は抑制されている。だが、資金繰りが一時的に緩和しても、業績不振から抜け出せない企業が水面下で過剰債務に直面している実態を改めて浮き彫りにした。

 「過剰債務」との回答企業を業種別でみると、「過剰債務」率の最高は、「飲食店」で79.6%、「宿泊業」の78.0%、「娯楽業」の65.3%と続く。旅行や葬儀、結婚式場などの「その他の生活関連サービス業」は60.4%だった。飲食店や宿泊業は、休業協力への協力金や「Go To トラベル」、「Go To イート」など複数の支援策が実施されたが、それでも「過剰債務率」が高かった。人流抑制、三密回避が広がり、コロナ禍の影響が深刻なことを示している。

 事業再構築への取組みは(2757社から回答)、「事業再構築の意向はない」は30.0%。一方、過剰債務が足かせで「取り組むことができない」は15.4%、「取組み規模を縮小した」は18.9%だった。過剰債務を抱える企業のうち、34.3%が事業再構築にマイナスの影響を訴えている。規模別では、過剰債務が事業再構築の足かせになっている企業の割合は、大企業で32.3%、中小企業で34.5%だった。

 国内ではワクチン接種が広がり、グローバルな景気回復の中で、国内経済の活性化には生産性の向上や商取引の円滑化は欠かせない。だが、足元では「過剰債務」を訴える企業が3社に1社あり、債務が事業再構築の足かせになっていると回答している。このままでは政府の描く事業再構築が理想倒れに終わる恐れも出てきた。成長戦略と同時に、過去の債務への抜本的な対応が必要な時期が迫っている。

 同調査結果は↓

https://www.tsr-net.co.jp/news/analysis/20210817_01.html