東京商工リサーチがこのほど発表した調査結果によると、2020年度に破産した5552社のうち、3789人の社長が破産開始決定を受け、社長破産率は68.2%と約7割の高率に達したことが分かった。同調査は、2020年度(2020年4月~2021年3月)に官報に破産開始決定が掲載された法人(株式会社、有限会社、合同会社)と、社長個人を分析したもので、初めて全国的な破産会社と社長の破産を追跡調査したもの。
政府は経営者保証の解除を進めるが、金融機関からの新規融資の6~7割に経営者保証が付いており、会社が破産すれば社長破産率は約7割に達し、社長個人もほとんどが破産に追い込まれる実態が明らかになった。社長個人の破産開始決定の時期は、法人と同時が3445件(同90.9%)で、9割に達した。破産会社の社長の大半は、会社と同時に個人も破産開始決定を受けている。
破産会社で社長も個人破産した「社長破産会社」と2020年度の全倒産の構成比を比較したところ、産業別では、「建設業」の社長破産率が高く、全倒産との比率差が2.0ポイント。設備投資が重く、社長個人の資産投下や担保提供が負担になっている。一方、比率マイナスだったのは、「サービス業他」の▲4.1ポイント。対象から個人企業を除外しており、小・零細規模で個人企業の多い飲食業などのサービス業他は比率が低下したとみられる。
原因別での比較では、「販売不振」と「既往のシワ寄せ」の社長破産率が高かった。「販売不振」は、社長破産会社が2.3ポイント上回った。売上低迷が長引き、資金調達や取引に際し、社長個人の保証を付けるケースが多かったようだ。また、赤字累積の「既往のシワ寄せ」も0.6ポイント高く、販売不振と同様に破産するまで社長個人の資産を投下し、債務を膨らませながら事業継続を目指したとみられる。
連鎖倒産の「他社倒産の余波」は、今回の調査で同一社長の複数の会社破産を1社に集計したため、比率が低く出た。2020年度全倒産のうち、1434社の個人企業他を除き資本金を比較したところ、資本金1千万円以上5千万円未満が比率差▲5.4ポイント、5千万円以上1億円未満が▲1.8ポイント、1億円以上が▲0.6ポイント、いずれも低かった。資本金が大きな会社ほど社長破産率が低く、資本金の少ない小・零細企業は比率が高かった。
同調査結果は↓