後継者難の倒産原因、代表者の「死亡」が52.4%に

 2021年1~7月の「後継者難」倒産は208件(前年同期比▲5.8%減)で、2年ぶりに前年同期を下回ったことが、東京商工リサーチの調査で分かった。全体の倒産(1~7月累計3520件)はコロナ禍の資金繰り支援に下支えされ低水準で推移しているが、「後継者難」倒産は全体の5.9%(前年同期4.6%)に上昇した。これは調査を開始した2013年以降では最高を記録し、中小企業の後継者難の深刻さを示している。

 金融機関は貸出審査に際し、これまでは財務内容に基づくスコアリングが中心だったが、事業性や成長性など「事業性評価」への取組みが浸透し、後継者の有無が重要な判断材料の一つになっている。多くの中小企業は代表者が経理や営業など経営全般を担っている。このため、経営を優先する経営者ほど後継者育成や事業承継への準備が後回しになりがちだ。代表者の高齢化に伴い事業継続へのリスクは年々、高まっている。

 「後継者難」倒産の要因別では、代表者などの「死亡」が109件(前年同期比18.4%増)で最多。調査を開始した2013年以降、1~7月累計は2014年(103件)以来、7年ぶりに100件を超えた。「後継者難」倒産に占める構成比は52.4%(前年同期41.6%)で、前年同期より10.8ポイント上昇。また、「体調不良」は61件(前年同期比▲20.7%減)で、2年ぶりに減少したが、前年同期(77件)に次ぎ、調査を開始以来、2番目に多かった。

 「高齢」が20件(前年同期比▲31.0%減、構成比9.6%)で、3年ぶりに前年同期を下回った。代表者などの「死亡」と「体調不良」は合計170件(前年同期比0.5%増、前年同期169件)で、2年連続で前年同期を上回った。「後継者難」倒産に占める構成比は81.7%(前年同期76.4%)と、前年同期より5.3ポイント上昇。代表者の高齢化の進行とともに、中小企業は事業承継や後継者の育成が大きな経営課題に浮上している。

 資本金別では、1千万円未満(個人企業他を含む)が112件(前年同期比▲5.8%減)。「後継者難」倒産に占める構成比は53.8%(前年同期53.8%)と、5割を超えた。一方、1億円以上は1~7月累計では2019年以降、3年連続で発生がない。負債額別では、1億円未満が142件(前年同期比▲12.3%減)。「後継者難」倒産に占める構成比は68.2%(前年同期73.3%)で、引き続き小規模倒産が主体となっている。

 同調査結果は↓

https://www.tsr-net.co.jp/news/analysis/20210810_04.html