相続税・贈与税は、被相続人・贈与者又は相続人・受贈者の国内での住所の有無や日本国籍の有無等により、課税財産の範囲が定められている。2021年度税制改正では、高度外国人材の日本での就労等促進のため、日本に居住する外国人に係る相続・贈与については、その居住期間にかかわらず、国外に居住する外国人や日本に短期的に滞在する外国人が相続人・受贈者として取得する国外財産を相続税・贈与税の課税対象としない改正が行われた。
近年の改正では、相続税又は贈与税の課税が日本で就労しようとする外国人の受入れの阻害要因とならないよう納税義務の範囲について見直しが行われてきたが、こうした見直し後の制度においても、日本に10年を超えて滞在していた外国人が日本で就労中に亡くなった場合には、国外に居住する相続人が取得する国外財産にまで課税されることが過度な負担となり、日本で長期間働く上での障害になっているとの指摘もあったところだ。
こうした指摘も踏まえ、2021年度税制改正では、課税対象が国内財産のみとなる制限納税義務者に対する財産の出し手となる一時居住被相続人及び一時居住贈与者の相続開始又は贈与前15年以内において国内に住所を有していた期間の合計が10年以下という要件を撤廃する等の見直しが行われた。これにより、10年を超えて日本で就労する者から相続や贈与により財産を取得した場合であっても国外財産にまで課税が及ばなくなった。
また、贈与税の課税対象が国内財産のみとなる制限納税義務者に対する財産の出し手となる非居住贈与者について、その非居住贈与者の出国前の国内の居住期間に係る要件及び出国後の期間要件が撤廃された。これらの改正は、2021年4月1日以後に相続・贈与等により取得する財産に係る相続税・贈与税について適用され、同日前に相続・贈与等により取得した財産に係る相続税又は贈与税については従前どおりとされている。