2020年の酒類卸売業、減収が7割超、2割超が赤字

 東京商工リサーチが発表した「全国酒類販売事業者動向調査」結果によると、2020年(1~12月)の酒類の卸売業と小売業の休廃業・解散件数は、過去10年間で最多を記録した。コロナ禍で時短営業、酒類提供の禁止など飲食店の苦境が続き、その余波が直撃した格好となった。2020年の休廃業・解散は、酒類卸売業が109件(前年比36.2%増)、酒小売業225件(同11.9%増)で、2011年からの10年間ではそれぞれ最多となった。

 酒類卸売業の2020年の売上高は3兆3034億6400万円(前期比▲5.0%)、純利益は141億9800万円(同▲33.8%)だった。売上高合計は2019年も前期比▲0.3%で、コロナ禍の前から厳しい競争が続いていた。純利益も2019年は同▲6.1%の減益で、人件費増や競合、単価下落などで損益も悪化が目立っていた。また、2020年は、減収が342社(構成比74.3%、前期221社)と7割超を占めた。

 減収企業は前期から社数が1.5倍に増加。増収はわずか65社(構成比14.1%、前期153社)にとどまり、前期から88社(前期比▲57.5%)減少。飲食店の休業や酒類提供の制限などが、直撃したことがわかる。2020年の純利益が赤字は、114社(構成比24.7%)と2割超を占めた。2019年(53社)から倍増し、コロナ禍で赤字転落した酒類卸売業が目立つ。黒字企業は346社(構成比75.2%)で、2019年から61社減少した。

 一方、酒小売業702社の最新期決算(2020年1月~2020年12月期)の売上高合計は、3993億8500万円(前期比6.5%増)だった。当期純利益合計は52億5600万円(同▲19.0%)で、増収減益だった。ただ、大手と中小・零細規模では業績の二極化が拡大し、巣ごもり需要は大手が取り込んだようだ。当期純利益合計は2期連続の減益で、売上増も価格競争が激しく、利益が伴わない成長となっている。

 売上高合計は増収をたどるが、減収企業は458社(前期308社)と、大幅に増加。売上高上位20社では、減収は6社にとどまり、大手や中堅は売上高を伸ばした企業が多かった。一方、売上高1億円未満は483社(構成比68.8%)を占め、小・零細規模は厳しい時代が続く。最新期の純利益は赤字が156社(構成比22.2%)と2割に達し、2019年から約1.5倍になった。黒字企業も2020年は546社(同77.7%)で、▲8.0%減少した。

 東京に4度目の緊急事態宣言が発令され、政府は酒の提供停止などに応じない飲食店との取引停止を酒類販売業者に要請し、金融機関にも働きかけを求めた。いずれも13日までに撤回されたが、東京五輪・パラリンピックや夏の需要期に期待を寄せて、在庫を増やした事業者も多いとみられる。そんなタイミングでの市場縮小は、競争激化が必至なだけに、酒類販売事業者にも寄り添った細やかな支援やフォローが欠かせない。

 同調査結果は↓

https://www.tsr-net.co.jp/news/analysis/20210714_04.html