ホテルや旅行など観光産業の休廃業・解散が高水準

帝国データバンクがこのほど発表した「2021年1~6月の全国企業の休廃業・解散動向調査」結果によると、同期間における企業倒産は、6ヵ月中5ヵ月で前年同月比二ケタの大幅減少となり、過去最少となった前年同期をさらに下回って推移した。政府・民間金融機関による活発な資金供給やコロナ対応の補助金が、倒産抑制に効果を発揮していることが大きな要因とみられている。

一方で飲食店や小売店などのサービス産業では、緊急事態宣言下の営業制限が1年以上も続いており、先行きの見通しも未だ見えない。コロナワクチンの接種・普及により需要の持直しが今後期待される業界もある一方で、特に観光関連産業などでは需要回復より先に経営体力が限界に達するなど、経営再起への諦めムードが広がりつつある。こうした産業では廃業などの件数が急増しており、これまでと異なるトレンドが表面化している。

2021年1~6月に全国で休廃業・解散を行った企業(個人事業主を含む、速報値)は2万8400件(前年同期比▲4.6%)となった。同期間内では首都圏などで緊急事態宣言の発出・延長もあり、外食産業やサービス業を中心に引き続き厳しい経営環境が続いた。しかし、「ゼロ・ゼロ融資」をはじめ官民一体の資金繰り支援やコロナ対応の補助金が中小零細企業の経営を強力に下支えし、休廃業・解散の増加を大きく抑制した。

ただ、同期間で2割超の減少(▲21.8%)となった倒産と比べて減少幅は小さく、今年1~3月時点(▲9.5%)と比べても大幅に縮小している。また、2021年1~6月の休廃業・解散における黒字企業の割合は56.0%と、同期間での集計では2018年1~6月(56.2%)に次ぐ高水準となった。先行きの見通しが立たないなか、財務内容やキャッシュに余裕のある企業が「あきらめ型」の廃業や解散を選択している可能性がある。

業種別では、その他を除く7業種中4業種で前年同期を上回った。なかでも「運輸・通信業」369件)は前年同期比 15.0%増と大幅に増加しているほか、建設業やサービス業、不動産業でも増加。他方、「小売業」(2153件)は1割超の減少となり、全体の押下げ要因となった。業種細分類では、前年同期比で最も増加したのは「男子服卸売」(21件、前年同期比 200.0%増)だった。次いで一般旅行業や熱絶縁工事、旅行代理店などが続いた。

観光関連の休廃業・解散が前年から大幅に増加しており、「ホテル・旅館」(104件)は過去5年で初めて6月時点で100件を超えたほか、旅行代理店など旅行業全体の休廃業・解散は過去最多ペースとなっている。このほか、飲食店全体(261件)は大幅に減少した前年同期を僅かに下回って推移した。

 同調査結果は↓

https://www.tdb.co.jp/report/watching/press/pdf/p210705.pdf