20年「老人福祉・介護事業者」の新設法人は2746社

 東京商工リサーチが発表した「老人福祉・介護事業者新設法人調査」結果によると、2020年1年間に全国で新しく設立された「老人福祉・介護事業者」の法人数は、2746社(前年比10.3%増)だった。コロナ禍で新設数は6月まで前年を下回ったが、7月以降は一転して増加し、6ヵ月連続で前年同月を上回った。新設した経営者は、「コロナ禍で倒産した事業者に代わり、介護サービスを維持するため開業した」と話し、地域貢献も押し上げた格好だ。

 2020年の介護事業者の新設法人では、最多は「訪問介護事業」の2216社で、前年比192社増(前年比9.5%増)。次いで、デイサービスなど「通所・短期入所介護事業」の374社で、同102社増(同37.5%増)と大幅に増えた。有料老人ホームは73社(同14.1%減)と減少。認知症グループホームなどの「その他」は83社(同23.1%減)だった。過去10年で新設法人数のピークは2013年の3773社だった。

 しかし、2015年度の介護報酬のマイナス改定や人手不足が影響し、新規参入に二の足を踏む状況が続いていた。こうした事情を反映し、2014年から5年連続で減少が続いたが、介護市場の拡大に支えられ2018年を底に2年連続で増勢に転じた。2018年度の介護報酬のプラス改定に加え、自立支援や家族介護と親和性の高いデイサービスなど「通所・短期入所介護事業」の新設法人数が伸びた。

 2020年の「老人福祉・介護事業者」の倒産は118件(前年比6.3%増)、休廃業・解散は455件(同15.1%増)で、そろって過去最多を記録するなど、市場撤退を迫られる介護事業者は多い。一方で、高齢化社会の到来に伴い、市場拡大をビジネスチャンスとして捉え、準備不足のまま安易に参入した新設法人の淘汰も少なくない。2021年度の介護報酬プラス改定も追い風となり、今後も介護事業者の新設が見込まれる。

 これから高齢化社会は本番を迎える。生き残りには介護にふさわしい発想や経営理念が求められる。限られた予算や人員などの制約の中で、介護が必要な高齢者への対応はコスト優先だけで成り立つのは難しい。介護サービスの効率化と生産性の向上だけでなく、本来求められている介護ノウハウの共有など、新設法人の成長を促す支援に加え、業界全体の待遇や経営基盤の底上げが急務になっている。

 同調査結果は↓

https://www.tsr-net.co.jp/news/analysis/20210617_01.html