東京商工リサーチがこのほど発表した「国内107銀行の2021年3月期の預貸率調査」結果によると、2021年3月期の国内107銀行(単独決算)の預貸率は62.1%(前年66.2%)で、前年同期から4.1ポイント低下し、調査を開始した2008年3月期以降では最低となったことが分かった。業態別の預貸率は、大手行が53.7%(前年58.5%)、地方銀行が73.6%(同76.9%)、第二地銀が76.4%(同77.1%)で、全業態で低下した。
預金が貸出の伸びを大きく上回ったことが影響した。コロナ禍での企業への積極的な資金繰り支援で、貸出金は573兆5631億円(前年比3.3%増)と伸びた。一方、預金(預金+譲渡性預金)は922兆2290億円(同10.0%増)で、貸出金以上に伸び、預貸率を大幅に低下させた。大手行は貸出金が前年比1.7%増に対し、預金は同10.8%増と預金の伸びが大きく、預貸率は調査を開始した2008年3月期以降では最低を記録した。
預金と貸出金の差を示す預貸ギャップは348兆6658億円で、前年(282兆6391億円)から66兆267億円(23.3%増)拡大した。コロナ禍の資金繰り支援で貸出が伸びたが、支援策の持続化給付金や助成金、貸出金などが預金に還流し、預貸ギャップが拡大している。企業活動が停滞するなか、金利やサービスだけでは差別化が難しく、新規事業、M&A、転業支援など新たな資金運用先の開拓が急がれる。
107行のうち、預貸率が前年を上回ったのは21行(構成比19.6%、前年67行)で、2割にも届かなった。一方、低下したのは86行(前年40行)で、大手行が全7行、地方銀行が61行のうち51行、第二地銀が39行のうち28行だった。預貸率が低下した86行のうち、貸出金が増加したのは80行(構成比93.0%)に対し、預金は全86行で増加し、預貸率を押し下げた。
銀行別でみると、預貸率が最も低下したのは、「あおぞら銀行」の12.7ポイント低下(88.3→75.6%)。預金(3兆3259億円→3兆8551億円)が増加したが、貸出金(2兆9375億円→2兆9183億円)の減少で、預貸率が低下。以下、「広島銀行」8.9ポイント低下(84.0→75.1%)、「島根銀行」8.1ポイント低下(73.9→65.8%)の順。一方、預貸率が最も上昇したのは、熊本銀行の6.8ポイント上昇(112.3→119.1%)だった。
同調査結果は↓