公正取引委員会がこのほど公表した2020年度における下請取引の運用状況によると、下請取引においては、親事業者の下請法違反行為により下請事業者が不利益を受けている場合であっても、下請事業者からの自発的な情報提供が期待しにくい実態にある。このため、公取委では、親事業者及び当該親事業者と取引のある下請事業者を対象に定期的な書面調査を実施するなどして、違反行為の発見のために積極的な情報収集に努めている。
2020年度は、資本金の額又は出資の総額が1000万円超の親事業者6万名及び当該親事業者と取引のある下請事業者30万名を対象に書面調査を実施。これらを元に新規に着手した下請法違反被疑事件は8393件。事件の端緒別内訳をみると、公取委が親事業者及び下請事業者を対象に行った書面調査によるものが8291件、下請事業者等からの申告によるものが101件、中小企業庁長官からの措置請求が1件だった。
下請法違反被疑事件の処理件数は8333件であり、このうち8111件(2019年度比88件増加)について、(1)下請法第7条の規定に基づく勧告又は(2)違反行為の改善を求める指導(違反のおそれのある行為に対する指導を含む)の措置を講じている。この措置件数は、13年連続で過去最多を更新し、1956年の下請法施行以降、最多となっている。勧告件数は4件で、うち3件は製造委託等に係るもの、1件は役務委託等に係るものだった。
指導件数は8107件で、これは、1956年の下請法施行以降、最多となっている。指導件数 8107件のうち5340件が製造委託等に係るもの、2767件が役務委託等に係るものだった。また、措置件数8111件を業種別にみると、「製造業」(3270件、40.3%)が最も多く、「卸売業,小売業」(1705件、21.0%)、「情報通信業」(870件、10.7%)、「運輸業,郵便業」(854件、10.5%)がこれに続いている。
勧告又は指導を行った件数を下請法違反行為の類型別にみると全体で1万4916件となり、そのうち、発注書面の交付義務等を定めた「手続規定に係る違反」(下請法第3条又は第5条違反)が6937件、親事業者の禁止行為を定めた「実体規定に係る違反」(下請法第4条違反)が7979件となっている。手続規定違反は2019年度の6609件から328件増加、実体規定違反は同6919件から1060件増加している。
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https://www.jftc.go.jp/houdou/pressrelease/2021/jun/210602.html