2020年10月時点での大学発ベンチャー数は2901社と、2019年度で確認された2566社から335社増加し、企業数及び増加数ともに過去最多を記録したことが、経済産業省がこのほど公表した「2020年度大学発ベンチャー実態等調査」結果で明らかになった。また、大学発ベンチャーにおける経営人材不足への対応策の一つとして、サーチファンドを活用した解決策の検討を行い、報告書を公表している。
大学発ベンチャーは、大学等における革新的な研究成果をもとに、経済社会にイノベーションをもたらす担い手として期待されている。大学別の大学発ベンチャー企業数をみると、引き続き「東京大学」が326社で最も多いものの、「京都大学」(227社)、「大阪大学」(179社)、「筑波大学」(146社)、「東北大学」(242社)など他大学の伸びも目立ち、多くの大学がベンチャー創出に力を入れていることがうかがえる。
大学発ベンチャーにおける新型コロナウイルスの影響については、特に資金調達(投資)でネガティブな影響が見られた(423社が複数回答)。238社は「調達は予定していなかった」ものの、資金調達(投資)を予定していた企業では、コロナ禍により「調達先候補との接触が難しくなった」(99社)や「調達検討が止まった」(51社)、「調達予定が見送られた」(48社)と回答した企業が多く見られた。
大学発ベンチャー企業の従業員に占める博士人材の比率は、特に研究成果ベンチャーや技術移転ベンチャーにおいて、一般企業の研究職に比べて高く、大学発ベンチャーでは博士人材が積極的に活用されていることがうかがえる。また、今回の調査では、大学発ベンチャーにおける経営人材不足への対応策の一つとして、サーチファンドを活用した解決策の検討を行った。
その結果、サーチファンドを介して、大都市の経営人材が地方部や産学連携拠点都市の大学発ベンチャーと結びつけられることで、特に地方部の大学で深刻な経営人材不足の解決に貢献する可能性が示唆された。サーチファンドとは、投資家がサーチャー(経営者を目指す個人)に投資し、そのサーチャーが買収候補の企業を探索し、買収後は経営者として経営を担うことでキャピタルゲイン獲得を狙う、米国発の投資モデルである。
大学発ベンチャー実態等調査の結果は↓
https://www.meti.go.jp/press/2021/05/20210517004/20210517004.html