創業融資の2020年度実績は4万580先、2477億円

 日本政策金融公庫国民生活事業がこのほど発表した2020年度の創業融資実績(創業前及 び創業後1年以内)は4万580先(前年度比60.8%増)、2477億円(同53.4%増)と、融資先、融資金額ともに大きく伸びたことが分かった。先数の内訳をみると、「創業前」融資が前年度比▲24.5%と減少する一方で、「創業後1年以内」融資が前年度比210.4%増と大幅に増加し、実績全体が増加している。

 これは、コロナ禍が長期化の様相を見せる中で、創業準備者の多くが創業計画の見直しや延期を余儀なくされた一方で、コロナ禍以前に創業した事業者は、経営環境の変化により事業が軌道に乗るまでの期間が長期化し、資金需要が高まったことが一因とみられている。また、「創業前」融資先数は2020年5月(730先、前年比▲47.0%)をボトムに、増減はあるものの回復基調を見せている。

 この背景として、コロナ禍における働き方に対する意識変化や、リモートワークの浸透等で、創業への関心が高まってきていることが考えられる。中には、「地方に移住しての創業」や、「コロナをビジネスチャンスととらえた新しいサービスによる創業」等、特徴的な創業事例も出てきているという。「創業前」融資先数を業種別にみると、「小売業」や「サービス業」は、2021年1月以降、対前年比で100%程度の水準まで回復してきている。

 しかし、コロナの影響が大きい「飲食店、宿泊業」の戻りは鈍く、これらの業種が従前の水準まで回復するには、まだ時間を要するとみられている。日本公庫では、引き続き創業者の資金需要に着実に対応していくとともに、オンラインセミナーの開催や、オンライン相談サービスの開始等により、創業希望者への情報提供や、コロナ禍に創業した方々の事業を軌道に乗せていくための創業後の支援にも積極的に取り組んでいくとしている。