最低賃金引上げ、中小企業の負担感や経営への影響大

 昨年の最低賃金の全国加重平均額は、コロナ禍による厳しい経済情勢が考慮され、1円の引上げにとどまったが、2016年から2019年まで4年連続で3%台(25円~27円)の大幅な引上げが行われてきた。東京商工会議所が発表した「最低賃金引上げの影響に関する調査」結果(有効回答数3001社)によると、こうした経緯を踏まえた現在の最低賃金額の負担感は、「負担になっている」と回答した企業の割合が55.0%と過半数に達した。

 「負担になっている」の内訳は、「大いに負担になっている」との回答が16.5%、「多少は負担になっている」が38.5%だった。業種別でみると、「宿泊・飲食業」(82.0%)、「介護・看護業」(67.3%)、「運輸業」(62.6%)といった、労働集約型産業を中心に、「負担になっている」と回答した企業の割合が高い。特に、コロナ禍で大きな影響を受けている「宿泊・飲食業」では8割に達した。

 また、現在の最低賃金額の経営への影響については、「影響があった」(「大いに影響があった」11.6%、「多少は影響があった」32.3%の合計)と回答した企業の割合は43.9%と4割に達した。業種別でみると、「宿泊・飲食業」(74.6%)、「介護・看護業」(55.8%)、「運輸業」(53.7%)といった労働集約型産業において、「影響があった」と回答した企業割合が高い。特に、コロナ禍で大きな影響を受けている「宿泊・飲食業」では7割に達した。

 現在の最低賃金額の経営への影響について、「影響があった」と回答した企業の具体的な内容(複数回答)は、「設備投資の抑制等」(27.5%)が最も多く、次いで、「正社員の残業時間を削減した」(21.8%)、「役員報酬を削減した」(18.0%)、「非正規の残業時間・シフトを削減した」(17.0%)との回答が多かった。一方で、25.5%と4社に1社の企業が、「特に対応策はとれなかった」と回答している。

 最低賃金額を全国で一元化すべきとの論調に対する考えについては、「反対」と回答した企業の割合は78.0%と約8割に達した。また、仮に、今年、最低賃金が30円の引上げとなった場合、経営に「影響がある」と回答した企業の割合は63.4%と6割に達した。その対応策(複数回答)は、「設備投資の抑制等」(42.1%)が最も多く、次いで、「一時金を削減する」(28.4%)、「非正規社員の採用を抑制する」(24.9%)との回答が多かった。

 同調査結果は↓

https://www.jcci.or.jp/20210405pressrelease.pdf