信金中央金庫は、コロナ禍での信用金庫の資金繰り支援の分析レポートを発表した。それによると、年初からの2回目の緊急事態宣言が2021年3月22日に全面解除されたが、新型コロナの感染収束が見通せず、「第4波」が懸念されるなかで新年度がスタートした。21年2月末の信用金庫の預金・貸出金動向を確認すると、全国254信用金庫の預金残高の合計は、157.9兆円、前年同月比8.2%増となった。
貸出金残高の合計は、78.0兆円、同8.3%増となった。月末ベースでは、預金残高は過去最高額、貸出金残高は年末で資金需要が増えた20年12月末に次ぐ多さとなった。預金、貸出金とも、新型コロナ感染拡大に伴い、20年春以降、高い伸びが続いている。主因は、資金繰り支援のための企業向け運転資金の増加と、その資金の預金口座での滞留だ。また、個人預金の増加要因は、各種給付金やコロナ禍での消費抑制などだ。
貸出金残高や預金残高の動きは、長期でみても、約30年前のバブル経済崩壊直後に迫る高い伸び率が続いている。過去の外的ショック時の企業向け貸出金動向と、今回のコロナ禍の動向を比較してみると、外的ショックとして、リーマン・ショック、東日本大震災、熊本地震を取り上げ、比較のためグラフの縦軸を同じにしている。今回のコロナ禍では、企業向け運転資金の伸び率が非常に高い。
過去の外的ショック時は3~4%程度だった企業向け貸出の伸び率が、コロナ禍では13%程度にまで高まっている。ショック後の動向については、リーマン・ショックでは15ヵ月後には返済により企業向け運転資金の伸び率がマイナスに転じている。東日本大震災では、1年後の年度末の12年3月に前年同月比の伸び率が最も高くなっている。
コロナ禍の今後については、限度額が6000万円に拡大された民間金融機関での実質無利子・無担保の制度融資の実行期限が21年5月末であること、昨年5月以降の同制度融資の元本返済が順次始まっていること、感染拡大後の融資実行額のピークが20年6月だったことなどから、21年度は貸出金の前年同月比での伸び率が鈍化していくと見込まれている。
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