日本商工会議所が発表した「事業承継と事業再編・統合の実態に関するアンケート調査」結果(有効回答数4140社)によると、自社株式の評価額が1億円超の企業は、従業員「100人超」が83.3%、「51~100人」が72%、「21~50人」が56.8%と、従業員規模が大きくなるにつれて株価が高い企業が増える傾向にある。一方で、「20人以下」の企業でも26.9%と3割弱が株価1億円を超えており、企業規模が必ずしも株価と比例するとは限らない。
2018年度税制改正を受け、事業承継税制の利用者数が増加するなか、自社株式評価額1億円超の相当程度の税負担が生じる企業では、既に後継者を決めている企業の48.6%と約半数が事業承継税制を「利用している(検討・準備中を含む)」と回答。一方で、「後継者候補はいる」、「後継者未定だが事業継続したい」企業では、「検討したことがない」が約半数を占めており、引き続き制度の周知・理解促進が必要だ。
また、「自社株式評価額が1億円超」かつ「既に後継者を決めている」企業では 、事業承継税制(特例措置)のエントリー手続きである特例承継計画の申請について、「申請予定なし」が35.7%、「よく分からない」が22.2%。一方、「申請する意向がある(申請済みを含む)」は42.2%となった。「申請する意向がある」企業は、「後継者候補がいる」企業で19.3%、「後継者未定だが事業継続したい」企業で21.8%だった。
事業承継税制利用の障壁(複数回答)については、「10年間の時限措置であり今後どうなるか不明」が45.1%で最も多く、次いで、「納税免除にならない可能性」(27.9%)、「納税猶予の取消しリスク」(24.8%)といった制度の不確実性が続く。以下、「提出書類や手続きが煩雑」(17.5%)、「特例承継計画の提出期限」(16.3%)、「後継者要件」(9.3%)、「先代経営者要件」(9.1%)などが挙げられた。
事業承継にあたっての課題(複数回答)は、「後継者への株式譲渡」が32.7%で最も多かった。その「後継者への株式の譲渡」と回答した企業において、株式譲渡を行う際の障害(同)は、「譲渡の際の相続税・贈与税が高い」が約7割(70.7%)、「後継者に株式買取資金がない」が約6割(60.8%)となっており、株式譲渡においては、税制面及び資金面がボトルネックとなっていることがうかがえる結果となった。
なお、事業承継税制は、2018年度税制改正において、10年間の特例措置として、各種要件の緩和を含む抜本的な拡充が行われた。基本は、施行日以後5年以内に承継計画を作成して(都道府県に提出し)贈与・相続による事業承継を行う場合とし、まず、猶予対象の株式の制限(発行済議決権株式総数の3分の2)を撤廃し、納税猶予割合80%を100%に引き上げることにより、贈与・相続時の納税負担が生じない制度とされている。
同調査結果は↓