賃金改善を見込む企業は42.0%、7年ぶりの低水準に

 帝国データバンクが15日に発表した「2021年度の賃金動向に関する企業の意識調査」結果(有効回答数1万1441社によると、2021年度の企業の賃金動向は、正社員の賃金改善(ベースアップや賞与、一時金の引上げ)が「ある」と見込む企業は42.0%となり、2014年度見込み(46.4%)以来の低水準まで落ち込んだ。2020年度見込み(53.3%)と比較しても11.3ポイント減少している。

 2021年度の賃金改善見込みを規模別でみると、大企業は38.2%となり、中小企業(42.9%)を下回った。小規模企業でも37.0%と4割以下となっている。業界別では、依然として人手不足が顕著な「建設」の47.8%が最も高い。また、2020年度見込みと比較すると、旅行代理店や旅客自動車運送など観光関連業種を含む「運輸・倉庫」(36.7%)では18.5ポイント減となるなど、賃金改善見込みは大きく減少した。

 2021年度の正社員における賃金改善の具体的内容は、「ベースアップ」が35.9%で、2020年度見込みから9.3ポイントの大幅減だった。「賞与(一時金)」は20.3%となり、同6.0ポイント減という結果になった。賃金改善が「ある」企業のその理由(複数回答)は、「労働力の定着・確保」(78.7%)がトップ。過去最高となった前回調査(80.6%、2020年1月)より減少したものの、依然として高水準にある。

 賃金改善をしない企業の理由(複数回答)では、69.4%と7割の企業が「新型コロナによる業績の低迷」を理由としていることが明らかとなった。2021年度の賃金の変化を雇用契約別にみると、賃金が「増加する」割合は「フルタイム正社員」が36.9%で最も高かった。次いで「外国人労働者」が18.9%となり、パート労働者などその他の項目も2割以下で続いている。特に、「派遣労働者」は7.9%となり、1割を下回っている。

 2020年度と比較した2021年度の自社の総人件費の変動見込みについては、「増加」する企業は54.2%と前回調査(2020年1月調査)から14.7ポイントの大幅減となり、「減少」は15.7%(同7.7ポイント増)だった。2020年度見込みまで7割前後となっていた総人件費の増加傾向は、新型コロナウイルスを主因とする企業業績の低迷や先行きの不透明感などによって急激に鈍化する結果となった。

 同調査結果は↓

https://www.tdb.co.jp/report/watching/press/pdf/p210208.pdf