東京商工リサーチが発表した「小売業の倒産動向調査」結果によると、消費低迷で2年連続倒産が増加していた小売業界だが、新型コロナウイルス感染拡大で様相が一変した。2020年の小売業倒産(負債1000万円以上)は1054件(前年比▲14.3%)と、1991年以降の30年間で最少を記録した。コロナ禍で緊急事態宣言の発令に加え、休業や時短営業の要請やインバウンド需要の消失で、2020年の飲食業倒産は過去最多を更新した。
だが、“新しい生活様式”と三密回避が広がり、外出自粛や企業の在宅勤務で“巣ごもり”需要が生まれた。その結果、各種食料品小売業(前年比▲38.9%)、酒小売業(同▲26.9%減)など「飲食料品小売業」(同▲22.7%)が大幅に減少。さらに、「織物・衣服・身の回り品小売業」、「機械器具小売業」、家具や書籍小売などを含む「その他の小売業」なども、1991年以降の30年間で件数は最少と、個人消費関連の業態により明暗を大きく分けた。
小売業倒産は、深刻な人手不足から人件費の上昇や2019年10月の消費増税で、2019年7~9月期は361件(同29.3%増)、10~12月期も312件(同12.6%増)と、倒産が急増した。2020年1~3月期も277件(同2.2%増)と増勢が続いたが、そこに新型コロナウイルス感染拡大による政府の支援策が功を奏し、4~6月期259件(同▲9.4%)、7~9月期285件(同▲21.0%)、10~12月期233件(同▲25.3%)と、減少に転じた。
業種別では、最大の減少率は「飲食料品小売業」の前年比▲22.7%(316→244件)で、2年ぶりに前年を下回った。各種食料品小売業(前年比▲38.9%、59→36件)、酒小売業(同▲26.9%、26→19件)、野菜・果実小売業(同▲22.2%、18→14件)、菓子・パン小売業(同▲19.4%、72→58件)などで減少し、コロナ禍での“巣ごもり”需要の恩恵が大きかったことが分かる。
次いで、「織物・衣服・身の回り品小売業」の前年比▲16.5%(236→197件)で、2年ぶりに前年を下回った。男子服小売業(前年比▲37.5%、40→25件)や婦人・子供服小売業(同▲8.3%、108→99件)で減少した。コロナ禍で店舗休業や営業時間の短縮はあったが、外出自粛や在宅勤務の広がりで高額品よりカジュアルウェアなどの需要が貢献したとみられる。
形態別では、最多が消滅型の「破産」で939件(前年比▲14.4%)。倒産に占める構成比は89.0%(前年89.1%)と、約9割を占めた。一方、再建型の「民事再生法」は34件(前年比▲5.5%、構成比3.2%)。会社更生法は2018年以降、3年連続で発生がなかった。法的倒産は1024件(前年比▲12.8%)で、構成比は97.1%と30年間で最高を記録した。中小・零細企業が多く、大半が再建を諦めて消滅型の破産を選択しているようだ。
同調査結果は↓