金融庁、金融機関の事業者支援の在り方を明確化

 東京商工リサーチの発表によると、2020年12月25日、金融庁は「事業者を支える融資・再生実務のあり方に関する研究会・論点整理」を公表した。議論を始めた当初、金融庁は動産や債券のほか、知的財産、のれんなどを裏付けとする担保権について、「包括的担保」と総称していたが、公表された資料では「事業成長担保」(仮称)との名称も提示し、金融機関の事業者支援の在り方をより明確にした。

 記者向けブリーフィングで、金融庁の担当者は、産業構造の転換により、有形資産より無形資産が重要な時代と指摘。従来の不動産担保だけでなく、事業自体を担保としたファイナンスの実施が重要との認識を示した。また、「生産性の向上に資するリスクマネーの提供」など、日本経済が抱える問題と担保の関係に触れ、事業成長担保がこれまでリスクが高く十分な融資が受けられなかった事業者への資金供給につながる可能性を示唆した。

 一方、事業成長担保が導入された場合にも既存の担保制度がなくなるわけではなく、有用な場合には従来通りの不動産担保の活用を否定するものではない点も強調。整理された論点は今後、法務省の法制審議会で本格的に検討される見通し。主な論点をみると、貸し手の範囲の限定として、事業成長担保は貸し手の権利が強くなる可能性があり、担保権の濫用防止や債務者保護の観点から担保権設定者に適格要件を求めるかどうか。

 経営者保証の利用制限として、事業成長担保で事業のモニタリングが行われることで、経営者に対する規律付けや信用補完になるので、粉飾決算などの場合を除いて経営者の個人保証を取るべきではないのではないか。登記制度の簡便化として、債権者が債務者の事業再生を支援しない場合、債務者が新たな債権者を探しやすくするため、担保権についての登記を整備・簡便化するべきではないか。

 不動産など個別資産の担保権との調整として、事業とは独立して価値を持つ不動産の包括的担保上の取り扱い。すでに設定されている担保権との優先順位をどうするか。商取引債権や労働者債権の位置づけとして商取引や労働者は事業継続で不可欠であることを踏まえ、どの程度保護されるべきか。また、事業成長担保権が設定されている場合、DIPファイナンスを優先または同順位に設定できるようにするべきか、などがある。

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