野村総合研究所は、2019年の日本における純金融資産保有額別の世帯数と資産規模を、各種統計などから、日本の富裕層は133万世帯、純金融資産総額は333兆円と推計した。また、2020年10月~11月に、全国の企業のオーナー経営者(主要株主かつ代表者)を対象に「NRI富裕層アンケート調査」を実施した(有効回答1520名、うち本人と配偶者の保有する金融資産の合計額が1億円以上の回答305名)。
預貯金、株式、債券、投資信託、一時払い生命保険や年金保険など、世帯として保有する金融資産の合計額から負債を差し引いた「純金融資産保有額」を基に推計した結果、純金融資産保有額が1億円以上5億円未満の「富裕層」、及び同5億円以上の「超富裕層」を合わせると132.7万世帯(富裕層124.0万世帯、超富裕層8.7万世帯)。富裕層と超富裕層をあわせると2019年は、2005年以降最多の2017年の126.7万世帯から6.0万世帯増加した。
2017年から2019年にかけて、富裕層及び超富裕層の純金融資産保有額は、それぞれ9.3%(215兆円から236兆円)、15.6%(84兆円から97兆円)増加し、両者の合計額は11.1%(299兆円から333兆円)増えた。また、富裕層・超富裕層の純金融資産保有総額は、世帯数と同様、2013年以降一貫して増加を続けている。過去10年近くにわたって富裕層・超富裕層の世帯数及び純金融資産保有額が増加している。
その要因は、株式などの資産価格の上昇により、富裕層・超富裕層の保有資産額が増大したことに加え、金融資産を運用(投資)している準富裕層の一部が富裕層に、そして富裕層の一部が超富裕層に移行したためとみている。2020年はコロナ禍の中においても株価は上昇しているものの、多くの経済指標は悪化しており、今後の富裕層・超富裕層の世帯数や純金融資産保有額に影響を与える可能性がある。
コロナ禍が富裕層・超富裕層である企業のオーナー経営者の意識や行動に影響を与えている。アンケート結果によれば、個人資産の管理・運用について、「複雑でわかりにくい商品よりも、シンプルでわかりやすい商品を好むようになった」(50%)、「元本割れする可能性のある金融商品のリスクを、以前よりも気にするようになった」(46%)と、約半数の企業オーナーの富裕層・超富裕層で資産運用の考え方が変化している。
また、「経済の先行きや、自分が管理・運用する資産に関して、積極的に情報収集や勉強をするようになった」(47%)、「自分の考えだけで資産の管理・運用をするのは限界があると感じた」(46%)、「資産の管理・運用に関するアドバイスをしてもらえる信頼できる専門家が必要だと思った」(42%)といった回答も多く、相場の急変に対して専門家のアドバイスを含む多様な情報を集めて、資産運用の意思決定をするという考え方が強まっている。
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