居酒屋倒産、1月~10月までにすでに過去最多を更新

 帝国データバンクが発表した「居酒屋経営業者の倒産動向調査」結果によると、2020年1月~10月の居酒屋経営業者の倒産は164件発生し、過去最多だった2019年の161件を10月までに更新した。月別でみると、緊急事態宣言が発令された4月(23件)に最多、5月は、裁判所や弁護士事務所の業務の大幅縮小などの影響で減少したが、その後は高水準で発生し続け、このままのペースで倒産が発生すると、年間200件に達する可能性もある。

 164件を地域別でみると、「関東」が50件(構成比30.5%)で最多、次いで、「近畿」(49件、同29.9%)、「中部」(22件、同13.4%)と続く。2006年以降は、「近畿」が最多となっていたが、10月時点では僅差ながらも「関東」が最多となっている。また、「関東」、「北陸」、「九州」では、すでに最多を更新。都道府県別では、「東京都」が30件で最多。以下、「大阪府」(26件)、「愛知県」(11件)、「兵庫県」(10件)、「福岡県」(9件)と続く。

 負債額別にみると、「1000万~5000万円未満」の小規模倒産の構成比が80.5%(132件)を占める。「5000万~1億円未満」の倒産は24件発生し、10年ぶりに20件台となった。また、2011年以降は負債50億円超の大型倒産は発生していない。態様別にみると、「破産」が155件で全体の94.5%を占めた。2012年以降減少傾向だった「民事再生法」は昨年と同数の7件発生。また、「会社更生法」は、2009年以降発生していない。

 居酒屋業態はじめ飲食業界は、昨年10月の消費税率の引上げに伴う軽減税率の導入により、内食や中食の需要が高まったことや、今年4月には 改正健康増進法が全面的に施行されるなど、飲食店を取り巻く環境は変化の時期を迎えていた。そうしたなか、追い打ちをかけるように 新型コロナウイルスの感染拡大により、営業自粛要請や営業時間短縮要請、その後も客足が回復しないなど飲食店に深刻なダメージを与えている 。

 現在、各種支援などを活用し、どうにか資金繰りを維持している企業も多いとみられる。新型コロナ感染拡大の収束の見通しが立たない状況は続くが、いかに客足を戻し、売上、利益を上げていくか、経営の根本的な改革が求められる。例年であれば忘年会や新年会といった居酒屋にとってはまさに書き入れ時を迎えるはずだが、第3波の発生で利用を控える動きもより強まる。年末年始需要の消失で、倒産ペースが加速する可能性もある。

 同調査結果は↓

https://www.tdb.co.jp/report/watching/press/pdf/p201103.pdf