飲食業倒産730件、通年で大幅な増加の可能性も

 東京商工リサーチが発表した「飲食業の倒産動向調査」結果によると、2020年1~10月の「飲食業」倒産は730件(前年同期比9.2%増)だった。新型コロナ感染拡大に伴う緊急事態宣言で、裁判所業務が一部縮小した5月を除き、倒産は月間70件以上で推移している。このペースを持続すると、年間最多を記録した2011年の800件を11月にも上回り、通年の件数は大幅に更新する可能性が高くなっている。

 業種別では、最多が日本料理店や中華料理店、ラーメン店、焼き肉店などの「専門料理店」で177件(前年同期比6.6%増)。次いで、「食堂、レストラン」169件(同11.9%減)、「酒場、ビヤホール(居酒屋)」150件(同31.5%増)の順。増加率の最高は、「そば・うどん店」の前年同期比60.0%増(10→16件)。零細規模の企業が多く、在宅勤務などで外食需要が減少し、売上低下による資金繰り悪化が響いたとみられる。

 原因別では、「販売不振」が621件最多、次いで、「既往のシワ寄せ(赤字累積)」31件、「事業上の失敗」28件と続く。『不況型倒産』(既往のシワ寄せ+販売不振+売掛金等回収難)は652件で、構成比は約9割(89.3%)を占めた。時短要請や営業自粛は解除されたが、コロナ禍前の客足は戻らず「販売不振」が直撃した格好だが、売上落込みから深刻な収益悪化に追い込まれた飲食店の実態を反映している。

 形態別では、最多は「破産」の691件(前年同期比11.0%増)で、倒産に占める構成比は94.6%だった。「飲食業」は過小資本の小・零細企業が多い。事業環境が悪化すると再建が難しく、「破産」を選択せざるを得ないケースが多いようだ。次いで、「民事再生法」26件(同10.3%減)、「特別清算」9件(同12.5%増)、「取引停止処分」4件(同55.5%減)。再建型は民事再生だけで構成比は3.5%(同10.3%減)にとどまった。

 資本金別では、個人企業を含む1千万円未満が651件(前年同期比9.2%増)。構成比は89.1%(前年同期89.2%)で、約9割を占めた。「飲食業」はスタートアップの初期費用が、比較的少なくても開業しやすい。ただ、過小資本の参入が多い反面、不測の事態が生じた場合、経営体力が持たず倒産に至る構造になっている。一方、1億円以上はゼロ(前年同期3件)だった。1億円以上が発生しなかったのは、1997年同期以来、23年ぶり。

 従業員数別では、「5人未満」が613件(前年同期比4.6%増)で最多だった。倒産に占める構成比は83.9%(前年同期87.7%)で、前年同期よりも3.8ポイント低下したが、依然として小零細企業が全体の8割以上を占めた。また、「5人以上10人未満」が73件(同55.3%増)で、従業員数10人未満の企業が93.9%だった。300人以上はゼロで、2008年同期以降、12年連続で発生していない。

 同調査結果は↓

https://www.tsr-net.co.jp/news/analysis/20201111_01.html