賃金不払残業、1611社に計約98億円の支払を指導

 厚生労働省は、2019年度に時間外労働などへの割増賃金を支払っていない企業に対して、労働基準法違反で是正指導した結果を取りまとめ公表した。これは、全国の労働基準監督署が、賃金不払残業に関する労働者からの申告や各種情報に基づき企業への監督指導を行った結果、今年3月までの1年間に不払いだった割増賃金が各労働者に支払われたもののうち、その支払額が1企業で合計100万円以上となった事案を取りまとめたもの。

 是正結果によると、是正企業数は前年度を157社下回る1611社、その是正支払金額も同26億815万円下回る98億4068万円だった。業種別にみると、「商業」が292社(構成比18.1%)で最多、次いで「製造業」283社、「保健衛生業」208社、「建設業」203社と続く。1企業当たりの支払われた割増賃金額の平均額は611万円(前年度711万円)。また、是正企業1611社の対象労働者数は7万8717人(同11万8837人)だった。

 対象労働者数を業種別にみると、「保健衛生業」が1万9580人(構成比24.9%)で最多、次いで「製造業」1万1902人、「商業」1万1187人と続く。労働者1人当たりの支払われた割増賃金額の平均額は13万円だった。是正支払額を業種別にみると、「保健衛生業」が24億4448万円(同24.8%)で最多、次いで「商業」15億8693万円、「製造業」10億3203万円、「建設業」10億2412万円となっている。

 賃金不払残業の解消のための取組事例をみると、固定残業代制度の不適切な運用がある。卸売業のA社は、「労働時間が全く把握されておらず、残業代が一切支払われない」との情報を基に、労基署が立入調査を実施した。A社は、労働者に対し、月10時間から42時間相当の残業手当を定額で支払っていたが、実際の労働時間を全く把握しておらず、賃金不払残業の疑いが認められたため、実態調査を行うよう指導した。

 A社は、パソコンの送信メールのログ記録や労働者からのヒアリングなどを基に実態調査を行った上で、不払の割増賃金を支払った。また、賃金不払残業の解消のため、「労働時間適正把握ガイドライン」に基づく労働時間の考え方について資料を作成し、管理者を含めた全ての労働者に周知したり、パソコンのオン/オフ時の時刻を自動記録する勤怠管理システムを導入し、客観的な記録を基礎として労働時間を把握などの取組みを実施した。

 この件は↓

https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_00002.html