携帯料金引下げの家計への影響~第一生命経済研究所

 第一生命経済研究所がこのほど発表した「携帯料金引下げの家計への影響再考」と題したレポートによると、菅新首相は日本の大手携帯事業者には依然として競争が十分働いていないと指摘し、携帯電話の料金はさらに下げる余地があると述べた。実際、総務省の消費者物価指数によれば、携帯通信料の価格は2017年度から2年間で▲9.1%下がったものの、携帯通信料が家計支出に占める割合が高止まりしていることが分かる。

 消費支出に占める移動通信通話使用料の割合は世帯主の年齢階層が若いほど高く、18歳未満人員比率の比較的高い年収450~1000万円世帯で移動通信通話料金割合が平均を上回る。移動通信通話料金が引き下げられれば、全国まんべんなく若年層や子育て世帯への恩恵がより大きくなる可能性が高いが、他方で移動通信端末の利用率が低い高齢者層への恩恵が少ないという特徴もある。

 一方、2019年度の総務省の家計消費状況調査を用いた試算では、移動通信端末を使用していない人も含めると、一人当たり年平均5万3308 円を移動通信通話料に費やしていることになる。これは、仮に移動通信通話料金が1割安くなると、国民一人当たり年間5300円強の負担軽減につながるため、家計全体では6700億円以上の負担軽減になることを示唆している。

 また、2019 年平均の総務省家計調査を用いて世帯主の年齢階層別の負担軽減額を算出すると、世帯主の年齢が50代以下の世帯では1.5万円/年を上回るも、世帯主が60代以上世帯になるとその額が1.5万円を大きく下回る。同様に、世帯主の年収階層別では、年収が650万円以上の世帯では1.5万円/年以上となるも、年収400万円未満ではその額が1万円を下回ることになる。

 しかし、一律的な値下げとなると、家計部門への直接的な恩恵はあるが、通信会社の売上は値下げ分減少することが想定されるのでその悪影響も考慮しなければならない。レポートは、「携帯料金引下げ策は、家計支援策として議論を進めるというよりも、移動通信事業者の競争環境の整備を通じて、いかに料金引下げを図るかという観点で議論を進めるべきもの」との考えを示している。

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http://group.dai-ichi-life.co.jp/dlri/pdf/macro/2020/naga20200918keitai.pdf