中小企業庁がこのほど公表した2019年度における下請取引の適正化に向けた取組み状況によると、同庁及び公正取引委員会は、下請事業者の保護及び取引の公正を図るため、協力して下請代金支払遅延等防止法の執行に当たっている。その一環で、同法の違反行為が認められた親事業者に対し、違反行為の是正やその他必要な措置をとるため、親事業者及び下請事業者を対象に定期的な書面調査を実施している。
書面調査の結果は、改善を必要とする事案の発見につながり、ひいては下請取引の適正化に資する。2019年度は、約5万件の親事業者、その親事業者と下請取引を行う約24万件の下請事業者に対して書面調査を実施。2018年度以降、インターネットを活用した回答方法も選択できるように制度運用を見直し、2019年度における親事業者に対する調査においても、インターネットからも同調査へ回答できる状況で実施した。
また、2019年度では、855社の親事業者へ立入検査等を行い、うち706社の親事業者に対し、改善指導を行った。違反行為の内訳をみると、禁止行為の違反では、「支払遅延」(183件)及び「下請代金の減額」(133件)が多く見受けられ、義務行為の違反では、「3条書面の記載事項不備・未交付」が618件のほか、「5条書類(取引の経緯を記載する書類)の未保存」が553件見受けられた。
下請代金の返還では、下請法違反によって改善指導を受けた親事業者のうち、減額した下請代金、支払遅延に係る遅延利息など、下請法の禁止行為違反となる計188社の親事業者に対し、中小企業庁及び全国各地域9箇所に拠点を置く各経済産業局等が、総額で約1億3800万円を下請事業者に返還をするように改善指導を行い、これら親事業者は不当な下請代金の返還を実施している。
業種別による下請法違反の状況では、違反行為の累積数100事業所以上となる業種でみると、違反行為の累積数が多い順で、「機械器具卸売業」、「生産用機械器具製造業」、「金属製品製造業」、「道路貨物運送業」、「情報サービス業」、「電気機械器具製造業」、「運送用機械器具製造業」、「はん用機械器具製造業」、「建築材料・鉱物・金属材料等卸売業」、「繊維工業」、「繊維・衣服等卸売業」、「プラスチック製品製造業」などが挙げられる。
なお、企業間取引に関する中小企業の様々な悩み等に対応するため、全国中小企業振興機関協会と全国47都道府県下請企業振興協会に設置された下請かけこみ寺の2019年度の相談実績は9450件(2018年度8381件)だった。その内容は「下請法」に関する相談件数が1058件(同1151件)、「建設業」に関する相談件数が1891件(同1814件)、「その他」が6501件(同5416件)となっている。
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https://www.meti.go.jp/press/2020/08/20200820003/20200820003-1.pdf