2019年度の滞納整理の訴訟提起は115件~国税庁

 国税庁が先日公表した2019年度租税滞納状況によると、新規発生滞納の抑制及び滞納整理の促進により、今年3月末時点の滞納残高は前年度に比べて6.9%減の7554億円と21年連続で減少した。同庁では、処理の進展が図られない滞納案件については、差押債権取立訴訟や詐害行為取消訴訟といった国が原告となる訴訟を提起したり、滞納処分免脱罪による告発を活用して、積極的に滞納整理に取り組んでいる。

 原告訴訟に関しては、2019年度は115件の訴訟を提起。訴訟の内訳は、「供託金取立等」8件、「差押債権取立」7件、「その他(債権届出など)」97件のほか、特に悪質な事案で用いられる「名義変更・詐害行為」が3件。また、財産の隠ぺいなどにより滞納処分の執行を免れようとする悪質な滞納者に対しては、「滞納処分免脱罪」の告発を行うなど、特に厳正に対処。2019年度は、9件(17人員)を告発している。

 悪質な滞納事例をみると、滞納処分の執行を免れるため、関連法人に事業を引き継いだように装い、運送代金を休業中の関連法人の預金口座に振り込むなどして財産を隠ぺいした行為について滞納処分免脱税で告発した事例がある。運送業を営む滞納会社は、過去に源泉所得税等を滞納し、運送代金債権の差押えを受けたことがある。滞納会社は、一旦は滞納国税を完納したが、その後課税調査を受け、多額の法人税等の発生が見込まれた。

 滞納会社の実質経営者は、課税調査中から国税の納付に否定的な意見をしており、更正決定を受けた法人税等について再び滞納会社への差押えが行われないように、休業中の関連法人に事業を引き継いだように装って、取引先に対し、運送代金を関連法人名義の預金口座に振り込むように依頼。その結果、359回、計1億6700万円が、その預金口座に振り込まれた。徴収職員は、滞納会社、その代表者及び実質経営者を滞納処分免脱税で告発した。

 なお、上記の「詐害行為取消訴訟」は、国が、滞納者と第三者との間における債権者(国)を害する法律行為の効力を否定して、滞納者から離脱した財産をその第三者から取り戻して滞納者に復帰させるために行うもの。また、「名義変更訴訟」は、国税債権者である国が、国税債務者である滞納者に代わって、滞納者に帰属しながら滞納者の名義となっていない財産の名義を滞納者名義とすることを求めて提起するものだ。