契約書に押印が不要になる!?~政府が取組み推進

 政府が、押印不要に向けた取組みを進めている。新型コロナウイルス感染防止対策や働き方改革の一環として企業のテレワークが推奨されているが、書類にハンコを押す必要だけのために出社をしなければならない現状が対策を妨げているとの指摘がある。一方、行政手続きのデジタル化・オンライン化を推進する上で障害となっているのが、書面・押印・対面を求める現行手続きの存在だ。

 押印についての法的な考え方に関しては、すでに本年6月19日に、内閣府、法務省、経済産業省の連名で、押印についてのQ&Aを公表。その中で、「私法上、契約は当事者の意思の合致により、成立するものであり、書面の作成及びその書面への押印は、特段の定めがある場合を除き、必要な要件とはされていない」とし、押印をしなくても、契約の効力に影響は生じないとの見解を示している。

 さらに、文書の成立の真正を証明する手段として、継続的な取引関係がある場合は、取引先とのメールのメールアドレス・本文及び日時等、送受信記録の保存を、新規に取引関係に入る場合は、契約締結前段階での本人確認情報(氏名・住所等及びその根拠資料としての運転免許証など)の記録・保存本人確認情報の入手過程の記録・保存文書や契約の成立過程の保存のほか、電子署名や電子認証サービスの活用を例示している。

 次いで、7月17日に閣議決定された2020骨太の方針では、「書面・押印・対面を前提とした我が国の制度・慣行を見直し、実際に足を運ばなくても手続きができるリモート社会の実現に向けて取り組む。このため、全ての行政手続きを対象に見直しを行い、原則として書面・押印・対面を不要とし、デジタルで完結できるよう見直す」との記載を盛り込み「押印」の不要を強く打ち出した。

  一方、政府の規制改革推進室が6月9日にまとめた「書面・押印・対面手続きの見直し」では、行政手続きの見直しの具体的な取組項目として、社会保険・労働関係や国税・地方税等を列挙。また、民間の商慣行による手続きに関し、不動産関係(売買時の重要事項説明書の書面交付等)や、金融関係(口座開廃、融資、振込等の手続き)等について、法令上の制度見直しも含め重点的に取組みを求めるとしている。