「引上げ額の目安を示すことは困難」~最低賃金審議会

 厚生労働省がこのほど公表した「第57回中央最低賃金審議会」における今年度の地域別最低賃金額改定の目安についての答申によると、「感染症拡大による現下の経済・雇用への影響等を踏まえ、引上げ額の目安を示すことは困難であり、現行水準を維持することが適当」とした。1円以上の有額の目安を示さなかったのは、2009年度以来であり、目安が時間額に統一された2002年度以降5回目となる。

 中央最低賃金審議会目安に関する小委員会報告によると、労働者側委員は、「今回のコロナ禍のなか、最低賃金を改定しないことは社会不安を増大させ格差を是認することと同義であり、中賃の役割からしてあってはならない。春季生活闘争では、労使の真摯な交渉を経て賃上げが行われており、この流れを最低賃金の改定により労使関係のない労働者にも波及すべき」として、最低賃金の引上げは社会的要請であると主張した。

 一方、使用者側委員は、「コロナ禍によって、日本経済はこれまでに経験したことのない危機的な状況に直面しており、とりわけ、経営基盤が脆弱な地方の中小企業・小規模事業者 に甚大な影響を与え続けている」との認識を示し、「今年度の目安は、事業継続と雇用維持を最優先とするメッセージを各地方最低賃金審議会に発信するため、リーマンショック後の目安と同等以上の配慮が必要であり、据え置き・凍結とすべき」と強く主張した。

 こうした労使双方の意見を踏まえ、小委員会は、「2020年度地域別最低賃金額については、新型コロナウイルス感染症拡大による現下の経済・雇用・労働者の生活への影響、中小企業・小規模事業者が置かれている厳しい状況、今後の感染症の動向の不透明さ、こうした中でも雇用の維持が最優先であること等を踏まえ、引上げ額の目安を示すことは困難であり、現行水準を維持することが適当」との結論を下すに至った。

 目安小委員会の公益委員としては、「地方最低賃金審議会においては、地域別最低賃金の審議に際し、見解を十分に参酌し、地域の経済・雇用の実態を見極め、地域間格差の縮小を求める意見も勘案しつつ、適切な審議が行われることを希望」するとして、「来年度の審議においては、最低賃金については更なる引上げを目指すことが社会的に求められていることも踏まえ、議論を行うことが適当」との意見を示している。

 この件は↓

https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_12604.html