20年度賃上げ実施企業は6割弱、対前年度比大幅減

 東京商工リサーチが発表した「2020年度賃上げに関するアンケート調査」結果(有効回答数1万3870社)によると、2020年度に「賃上げを実施した」企業(一部予定含む)は57.5%で、前年度を23.4ポイント下回り、2016年度以降、最大の下げ幅となった。産業別では、中小企業の金融・保険業、不動産業、サービス業他で実施率が5割を割り込んだ。賃上げ実施企業(規模問わず)の「賃上げ率」は、3%未満が57.7%に達した。

 賃上げを実施した企業を規模別にみると、大企業の「実施率」が65.9%(2290社中、1509社)に対し、中小企業は55.9%(1万1580社中、6477社)で、10ポイントの差がついた。また、産業別でみると、「製造業」が62.8%(3949社中、2480社)と最も実施率が高く、以下、「卸売業」60.8%(2968社中、1807社)、「建設業」59.9%(1624社中、973社)と続く。一方、最低は「金融・保険業」の29.4%(170社中、50社)だった。

 規模では、大企業は農・林・漁・鉱業、建設業、製造業の「実施率」が70%を超えたが、中小企業では70%を超えた産業はなかった。特に、製造業は大企業の73.4%に対し、中小企業は60.3%と、大きな開きがでた。宿泊業や旅行業、飲食業などが含まれるサービス業他の「実施率」は、大企業が58.3%に対し、中小企業は48.1%で半数に届かなかった。新型コロナの影響が大きい業種では、規模が小さいほど賃上げが難しいことを示している。

 「実施した」と回答した企業に賃上げ内容について聞いたところ、7589社から回答を得た。最多は、「定期昇給」の84.8%だった。以下、「ベースアップ」の30.8%、「賞与(一時金)の増額」の23.5%、「新卒者の初任給の増額」の8.2%など。「新卒者の初任給の増額」は、大企業の12.8%(1380社中、177社)に対し、中小企業は7.1%(6209社中、446社)で、5.7ポイントの開きがあった。

 また、賃上げ率(年収換算ベース)は、1%区切りでみると、最多は、「2%以上3%未満」の26.7%。次いで、「1%以上2%未満」の23.6%。「1%未満」を含めた「賃上げ率3%未満」は57.7%で6割近くにのぼる。規模別では、大企業の「3%以上」は28.9%に対し、中小企業は45.2%に達した。中小企業は、人材獲得や定着率を上げるため、身の丈を超えた賃上げを迫られている状況がうかがえる。

 同調査結果は↓

https://www.tsr-net.co.jp/news/analysis/20200720_02.html