個別労働紛争処理制度は、個々の労働者と事業主の紛争を、裁判に持ち込まず紛争当事者間で自主的かつ迅速な解決を図る制度。厚生労働省がこのほど発表した2019年度における同制度の施行状況によると、労働基準法上の違反を伴わない解雇、労働条件の引下げなどの民事上の個別労働紛争に係る相談件数は、前年度比4.8%増の約27.9万件と、2年連続で増加して過去最多となり、高水準で推移している。
全国379ヵ所に設けられた総合労働相談コーナーに寄せられた労働相談は、2019年度1年間で前年度比6.3%増の118万8340件と12年連続で100万件を超え、高止まりしている。このうち、民事上の個別労働紛争に関するものは4.8%増の27万9210件だった。内容別では、「いじめ・嫌がらせ」が過去最多の8万7570件(25.5%)で8年連続トップ、「自己都合退職」が4万81件(11.7%)、「解雇」が3万4561件(10.1%)で続く。
個別労働紛争相談の内容を前年度と比べると、「いじめ・嫌がらせ」は5.8%増、「自己都合退職」が▲2.9%減、8年前までトップだった「解雇」は減少傾向にあったが6.0%増と増えた。相談者は、労働者が83.5%と大半を占め、事業主からの相談は9.6%だった。労働者の就労形態は、「正社員」が38.1%、「パート・アルバイト」14.1%、「期間契約社員」10.6%、「派遣労働者」5.2%となっている。
一方、自主的な紛争解決が難しい場合は、弁護士などの有識者で構成された紛争調整委員会にあっせんを申請できるが、2019年度のあっせん申請件数は前年度比▲0.3%減の5187件だった。処理状況をみると、手続きを終了した5163件のうち、「合意が成立」したものが36.2%、申請者の都合による「申請取下げ」が4.7%、紛争当事者の一方が手続きに参加しないなどの理由による「あっせんの打切り」が58.9%だった。
2019年度内に処理した5163件のあっせんのうち、「2ヵ月以内」に処理されたものが83.3%と8割強を占めている。なお、あっせんの申請者は、労働者が98.4%と大半を占め、事業主からの申請は1.6%、労使双方からの申請は0.1%(2件)だった。労働者のうち49.3%は「正社員」だが、「パート・アルバイト」(19.0%)や「期間契約社員」(18.7%)も合計で4割近くを占める。
2019年度個別労働紛争解決制度施行状況の詳細は↓