2019年設立された法人中「一般社団法人」は6083社

 東京商工リサーチがこのほど発表した「一般社団法人の新設法人調査」結果によると、2019年に全国で設立された法人のうち、「一般社団法人」は6083社(前年比1.3%増)で、前年から77社と微増した。前年比較では、2015年に11.4%増と二ケタの伸び率だったが、その後は伸び率が鈍化。2018年は6.0%減とマイナスに転じた。「一般社団法人」の構成比は4.6%で、横ばいが続いている。

 「一般社団法人」の産業別では、2019年は10産業のうち、製造業と小売業、金融・保険業の3産業を除く7産業で減少。社数は、「サービス業他」が4795社(構成比78.8%)で約8割を占め、次いで、「金融・保険業」517社(同8.5%)、「情報通信業」が386社(同6.3%)、「不動産業」が202社(同3.3%)の順。増加率トップは、「金融・保険業」が前年比42.4%増と急増。一方、下落率は「農・林・漁・鉱業」の同55.8%減が最大だった。

 業種別では、社会貢献や業界団体などの「他のサービス業」が2690社(構成比44.2%)で最多。次いで、「学術研究,専門・技術サービス業」の1162社、「医療,福祉事業」の583社など。これまで任意団体だった業界団体や研究機関が法人格を得るため、「一般社団法人」を利用するケースが目立つ。一方で、2018年に大幅減だった「金融、保険業」が前年比42.4%増と急増。背景には、資産流動化や不動産の信託などを目的とした設立が多かった。

 2008年12月の「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律」の施行で、公益性が必須でなくなった「一般社団法人」が生まれた。誰でも簡単に「一般社団法人」の設立が可能で、事業内容に制限はなく、営利事業も禁止されていない。制限があるのは、利益や資産を分配できないだけ。任意団体の町内会や同窓会などが「一般社団法人」を設立するケースも少なくない。非営利の組織が法人格を持つことで、資産の保有や契約が可能となるためだ。

 2018年度の税制改正まで株主がいない「一般社団法人」の仕組みを利用し、相続税対策などで新設法人数の増加につながっていたが、税制改正後は、一転して設立数が減少。公益性のイメージが残る「一般社団法人」だけに、悪用されることもある。事件が続けば、「一般社団法人」のイメージ悪化は避けられない。新設される法人格で3番目に多い「一般社団法人」が今後、広く認知されるには「公益性」のイメージからの脱却が必要かもしれない。

 同調査結果は↓

https://www.tsr-net.co.jp/news/analysis/20200619_01.html