2019年の新設法人は前年比1.7%増、2年ぶりに増加

 東京商工リサーチがこのほど発表した「全国新設法人動向調査」結果によると、2019年の新設法人は、13万1292社(前年12万8973社)だった。2018年はリーマン・ショック直後の2009年以来、9年ぶりに減少したが、1年で再び増加に転じた。2019年の休廃業・解散は過去最多の4万3348社、企業倒産は8383社だった。市場からの退出も多いが、新設法人が市場の新陳代謝を促し、経済活動の活性化の一翼を担っている。

 2019年の新設法人で最も多かった商号は、「令和」の54社。2019年4月1日の新元号発表まで、東京商工リサーチの企業データベースに商号が「令和」の法人は確認されなかったが、発表後は設立ラッシュとなり、前年トップの「アシスト」の46社を押しのけ、堂々の1位となった。上位には「アシスト」が46社(前年40社)、「トラスト」と「ライズ」が41社、「RISE」が38社など、前向きで未来志向、親和性を重んじる商号が並ぶ。

 産業別では、「不動産業」が前年比11.9%減の1万3853社。2019年は中国景気の低迷、相次ぐ不祥事で投資用貸家バブルが弾け、新設法人数の減少につながった。産業を細分化した業種の増減率では、最も減少したのは「繊維・衣服等卸売業」の前年比25.2%減(538社→402社)だった。アパレル関連業種は、百貨店の慢性的な不振に加え、2019年10月の消費増税、記録的な暖冬などで、個人消費の低迷が直撃した業界を象徴している。

 2018年の最大の下落率は、「なめし革・同製品・毛皮製造業」で前年比27.2%減(99社→72社)だったため、アパレル関連が2年連続で下落率ワーストとなった。2020年も幕開けから「新型コロナウイルス」感染拡大に伴う外出自粛の影響で、休業・営業自粛を余儀なくされ、百貨店や小売店の苦境はさらに増している。アパレル関連業種の新設数は、しばらく低調に推移する可能性が高い。

 2020年は「新型コロナウイルス」感染拡大に伴う緊急事態宣言の間、法務局が業務を一部縮小するなど、新設法人の手続きに少なからず影響が生じた。その後も、深刻な景気悪化に加え、「新しい生活様式」の実践で、従来のビジネスモデルや収益シミュレーションが狂い、起業計画の練直しを迫られることが危惧されている。新型コロナの終息時期にも左右されるが、2020年の新設法人数は、再び前年を下回り12万社台に戻る可能性も出ている。

 同調査結果は↓

https://www.tsr-net.co.jp/news/analysis/20200529_02.html